【小阪裕司コラム第106話】今すぐ結果が出なくても

【小阪裕司コラム第106話】今すぐ結果が出なくても

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第106話】今すぐ結果が出なくても

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある自動車店からのご報告。

同店には、車検の予約電話がよくかかってくる。あるいはLINE。
最近とみに多いことから、店主は、はたと気がついた。
「最近はこちらから電話せずとも、お客様から予約の連絡が来るようになった。はて?」。

そこで思い当たったのはハガキだ。
よくある車検お願いハガキはずっと前からあったが、ワクワク系を実践し始め、現在の形に作り変えた。
資料にはそのハガキも添付されていたが、そこには手書き風の文字に店主の似顔絵。
まずはお客さんのお名前から始まって、次に車名。そして車検期間が記されている。

それに続いて、

このハガキを手に取られたら… 
1.都合のいい日を考えてください。1~2日間で出来ます。(土日は陸運局がお休み) 
2.お電話ください

そして、同店の電話番号と、LINEへつながるQRコード。
これらハガキ上の内容もワクワク系のセオリーを踏んでいるが、今回のポイントはそこではない。
彼からの報告はこう続いていた。

このハガキに近い他の会員の事例を見て、それが魔法のように思え、自分もやりたくてたまらずの実践だった。
そこでこのように作り変え、まずは20通出したものの、電話は1件もなし。
2017年、今から約4年前のことだ。
「失敗もぜひ報告を」と私がよく会員に言うこともあり、当時「失敗しました」という微量の恨みつらみを含んだ報告を、実践会宛てにそっと送ったと店主は言う。

その後、ハガキは特に改善しないまま、出すことを毎月の定型業務とし、4年間続けていた。
するといつの間にか、お客さんの方から予約の電話やLINEが来るようになった。
気づけば今や約半数のお客さんが、自ら電話やLINEで予約を入れてくれるようになったのである。

ワクワク系では、お客さんに取ってほしい行動があるとき、それを自然にしてくれるようにいろいろ考える。
今回の彼のハガキの工夫はまさにそれだ。
しかしそれでお客さんの行動がすぐに起こることもあれば、時間をかけて行動変容していくもの、習慣化していくものもある。
また、お客さんとの間に絆ができてきて初めて行動してくれるものもある。

重要なことは、セオリー的に正しいことをやるならば、彼のように継続することだ。
彼からの報告書にあった結びの言葉をみなさんにも送ろう。
「効果が出るには時間のかかる実践もあるようです。皆さまご注意ください」。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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