【小阪裕司コラム第105話】この生徒たちはなぜ「辞めない」のか
【小阪裕司コラム第105話】この生徒たちはなぜ「辞めない」のか
同じ状況下で同じサービスを提供しているにもかかわらず、結果が大きく異なる。
そういうとき、その違いを生む原因に着目することはとても大切だ。
今日は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のフラダンス教室の先生からいただいたご報告を題材にさせていただこう。
ご報告の内容は、6月に行われるフラダンスの発表会に際してのことだ。
同じ時期、この先生の先輩格の先生(以下、A先生)も発表会を行う。
お互いの発表会を観に行く慣例になっているため、電話で事前の情報交換となった。
そのとき、唐突にA先生がこうおっしゃった。
「ところで先生のところは、このコロナの影響で辞められた生徒さんはいらっしゃる?」。
彼女はこう聞かれ、一瞬考えた。どうだろう?
そういえば昨年の緊急事態宣言解除後、仕事先(病院)の体制変更に伴い通えなくなってしまった生徒さんが一人いたが、どう考えてもこの一人のみ。
ちなみに彼女の教室の生徒数は63名。一方A先生のところは150人くらいいるだろう。
そこでは、計5クラスが解散したとのこと。
さらにA先生はこう訊いてきた。
「今回の発表会、先生のところは大勢参加されるの?
コロナが怖いといって出演されない方とかいらっしゃる?」。
なんでもA先生のところは、コロナが心配でという理由の元、不参加となった生徒が多数おられ、前回と比べると参加人数が60人ほど減ってしまったとのこと。
一方自分のところはと考えると、ご主人が闘病中で休会している生徒と、4月入会の生徒の2名を除いて全員参加。
コロナが怖いと言う生徒は一人もいない。これらの差はどこから生まれるのだろうか?
当実践会では、コロナ禍の色濃くなってきた昨年3月以降、既存顧客とのつながりを徹底強化することを繰り返し会員に説いてきた。
そして、特に昨年の4月、5月には、ほぼ毎日行ったオンラインミーティングに大勢が集まり、コロナ禍で今何をしているかを分かち合ってきた。
そこに連日のように参加していた一人が彼女だ。
その時期彼女は、リモートレッスンへの切り替えやLINEを活用して生徒らとハワイクイズを行ったり、様々なことをやり続けた。
彼女は言う。
「こうした小さなことの積み重ねが生徒の心を繋ぎ止めてくれたのではないかと、今では思っています」。
前回と同じ言葉を繰り返すが、「結果」には、必ずそれを生み出す「原因」がある。商いとは、言い換えれば原因と結果の法則なのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。