【メンテナンスショップレポート⑰】顧客接点強化の重要性とは
カテゴリ:整備収益増大, 關友信の車販取り組みのための基礎工事
【メンテナンスショップレポート⑰】顧客接点強化の重要性とは
整備工場の車販で、まず初めにやるべきは「自社客の代替促進」であることを前回で書いた。その際に重要なのが、「顧客接点強化」である。2年に1回の車検入庫以外で、いかに顧客との接点を持てるか?ということに取り組む必要がある。
この顧客接点強化では、「数を増やすこと」と「質を高めること」がある。
「数」は接点回数だ。2年に1回の車検から車検までの間の、オイル交換、法定点検、夏冬のタイヤ交換、自動車保険の満期、調子伺い、イベントの誘致、ニュースレターなど、きめ細やかな接点が欲しい。顧客のカーライフを全方位でサポートしながら、困ったときには頼ってもらえる存在であり続けたい。
そして大切なのが接点の「質」である。1500社以上が参加する「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰し、日本感性工学会の理事も務める小阪裕司さんが、著書の中で、「顧客との絆を生む四つの要素」を次のように定義している。
1.顧客との適度な接触頻度
2.顧客にとって有益な情報の発信
3.顧客への適切な自己開示
4.顧客に情緒的な体験を与えられた機会
これによると、顧客との接点回数を適度に増やすことは言うまでもないが、その接点が、売り込みや営業のものではく、顧客にとって役に立つ情報や忘れられない体験を含むものであることが大切であることがわかる。
弊社のご支援させていただいている整備工場の多くでは、顧客カルテを作成し活用している。これは、顧客の情報を整理し再来店時に利用するためのシートであるが、車両情報や整備履歴だけでなく、これまでに接点があった際に話した内容や家族の出来事など、あらゆることを記入する。
例えば、いつもオイル交換で来店するAさん。普段はおひとりで来店されるが、たまたまご家族で来店された際の会話。お子さんはお二人で、小6の長男と小4の長女。長男は野球が好きで、中学になったら野球部に入りたいと練習に励んでいる。長女はピアノが趣味で、コンクールが近い。入庫しているのはお父さんのフィットだが、奥さんはタントに乗っており、別のディーラーでメンテナンスしているとのこと。
このような情報を記入し、次回の入庫の際は、必ずカルテの情報を確認してから接客する。するとこんな会話が生まれる。「あれ?この前いらしてたお兄ちゃん、もう中学生ですよね。野球がんばってますか?もう部活は始められました?」とか、「妹さんも、ピアノうまくなりました?今日はお会いできなくて残念。」など。
顧客は、このようなたわいもない会話を覚えて話題にしてもらえることが嬉しく感じる。
また、このような会話の中から、次の車の乗り換えニーズを読み取り、次車の提案をすることもできる。例えば、Aさんの場合、「中学で部活が始まると、土日は遠征があったり、他のお子さんも一緒に乗せて出掛けたりが増えますよね。フィットの車検が半年後なので、そのタイミングで、もう少し大きなミニバンにされてはいかがでしょう。車内の着替えも楽ですよ。」といったようにである。
整備業の車販は一足飛びには進まない。今現在、利用いただいている顧客との絆を深め、「あなたから買いたい」と思っていただけるような関係性を作ることが必要だ。このような絆の深い顧客を多数持つ整備工場を目指していただきたい。
常務取締役 關 友信 Seki Tomonobu
損害保険会社の営業社員から独立しプロ代理店を経営、その後、自動車販売店での企業を目指し、直営店に入社する。販売店の現場で買取査定や販売業務を経験し、直営店の店長やエリア統括マネージャーとして活躍する。2006年に愛車広場カーリンクのチェーン展開を開始したのと同時に、カーリンク基礎研修の開発に着手、カーリンクチェーンの研修チームを統括する。その後も直営店の出張査定センターのマネジメントやディーラーコンサルティングなど、幅広く様々な仕事を経験、2014年からはCaSSの会員制度を立ち上げ、会員向けのサービスや企画を開発。
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