【小阪裕司コラム第41話】絆作りはすべてのステークホルダーと
【小阪裕司コラム第41話】絆作りはすべてのステークホルダーと
ここ数回連続で、今回の新型コロナウイルス問題に関連して、商売を営んでいるとしばしば起こるアクシデントにまつわる事例をご紹介してきた。そして、そこでは普段からの顧客との絆作りが強固な基盤となって商いを支えることをお伝えした。
ただ、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)では、絆作りは、有事の際の備えとして行っているわけではなく、商いのあらゆる方面に好影響を及ぼす最重要かつ日常的な活動として行っている。
そして、絆作りは、顧客とのみ行うわけでもなく、取引業者など、あらゆるステークホルダーと行うものだ。そういう好例をご紹介しよう。
あるワクワク系のバーでの事例だ。
このバーでは昨年、「絆作り強化」を1年間の活動テーマに掲げ、顧客はもちろんのこと、様々なステークホルダーとの絆作りを行ってきた。
顧客向けには新たに会員制度を設け、店主が空手の有段者であることとかけて、白帯から始まるユニークな制度として広めてきた。
そのおかげもあって、昨年の年末は、店を始めて23年間の中で最高の売上を記録することもでき、ワクワク系を取り組み始めた3年前と比較すると、売上は30%以上伸びた。
そしてもうひとつ店主が昨年の成果として挙げるのは、取引業者との絆作りだ。このバーは、国産ウイスキーにこだわりを持ったバーなのだが、ご存じの通り、今日国産ウイスキーは世界的に人気で入手困難となっている。
どれほどこの店がウイスキーに精通していても、仕入れられないのでは提供できない。しかし例えば昨年、入手困難とされている、1本数十万円という高級ウイスキーを優先的に卸してくれたこともあった。
絆作り活動の甲斐あって、
「数の少ない商品を分けて貰える事はもちろん、納期のタイトな商品も担当営業が居ない時に頼んでも迅速に対応してくれるようになりました」
「(店主催の)イベントではこちらから頼んでいないのに、担当営業さんが自ら会費を払い自主的にスタッフとして参加され、この一年間で絆営業マンとなってくれました」
と店主は語る。
ところでこの高級ウイスキー、さすがに1本数十万という価格から、当初店主は仕入れをためらった。しかし、「買わずに後悔するより買って後悔したほうが良い」との思いから仕入れに踏み切った。
そして、さてどう売ったものかと思案し、ある初めての試みを実行したが、これまで築いてきた取引業者との絆、顧客との絆が活きて、画期的な販売方法で最高の結果を出すことができた。
彼は何をやったのか。この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。