【小阪裕司コラム第39話】どんなときも、商いを支える強い足腰とは

【小阪裕司コラム第39話】どんなときも、商いを支える強い足腰とは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第39話】どんなときも、商いを支える強い足腰とは

商売を営んでいると、しばしば予期せぬことが起きる。
商売上のアクシデントだけでなく、突然災害に見舞われることも、今回の新型コロナウイルス問題のように、全国に波及し、終息が見通しづらいものも、時としてある。

どうすれば、そういう事態に備えられるのか。
商売は、何があれば、そういうときにも足腰が強いのか。
それを雄弁に物語る事例がある。

このコラムの前身である日経MJ紙でのコラムに掲載された、元会員である今の私の右腕、肥前利朗さんの会員時代の実例だ。ご紹介したい。下記の文章にある「ある店」が、当時彼が経営していた店だ。

あなたが町にでかけた際、災害などの影響で、自転車や徒歩での何時間もの帰宅を余儀なくされたとしよう。そんなとき、帰宅途中に様子を見に行きたくなる店があるだろうか。あるいは停電で町が真っ暗闇の中、それでも行きたくなる店があるだろうか。

私の知る関東のある子供服と雑貨の店では、震災直後、こんなことがあった。

大きな被害はなかったものの、店主らが帰宅できなくなり、やむなく店に泊まることにしていた23時過ぎ。店のドアをノックする音がしたので見ると、常連客のお父さんだった。

借りた自転車で都内から2時間半かけて帰って来たという。帰宅前に店の様子を見に寄ってくれたのだった。その後も、都内から歩いて帰ってきたというお母さんが、友達の家に預かってもらっている我が子を迎えに行く途中、店に立ち寄ってくれた。

次の日以降は停電があった。この店も暗闇の中営業していると、顧客は次々とやって来た。まだスーパーに多くの人が列を作っている時期に、生活必需品を扱っているわけでもないこの店に多くの顧客が訪れたのだ。

店主曰く、顧客の子供たちとは、暗闇の中お化け屋敷ごっこのようで、いつも以上に盛り上がったという。

また訪れた方々からは、「大丈夫だった?」「お店大変だったでしょ?」「おたくがやっているだけで安心する人がたくさんいるからがんばって!」などの声をいただき、実際に「子供以外の人と1週間ぶりにしゃべった。何か落ち着きました。ありがとうございます!」と感謝してくれた方もいたとのことだ。

この店は彼らにとってどんな存在だと、あなたは思うだろうか。「必要なものを買いに行く場所」であるだけでなく、こういうときにも思いを寄せられる存在。これからの社会に必要なものを、深く考えさせられるエピソードである。

以上が当時の文章だが、当時、顧客らは同様に自身も被災している中、自分の家族のようにこの店を心配し、心の拠りどころにもしていた。

そういう絆を顧客との間に育むこと。そんな絆顧客を必要十分に持っていること。
それが、どんなときも商売を支え、商売における強い足腰となるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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