【小阪裕司コラム第103話】大きな成果を生むための必殺技とは
【小阪裕司コラム第103話】大きな成果を生むための必殺技とは
先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の園芸店の方から、学びの深いご報告をいただいた。
お店の「名物」を作るべく、「焼き芋」に取り組んだご報告だ。
きっかけは新たな焼き芋機を購入したこと。
昨年の実績は363本。その実績の3倍は販売したいと、設定した目標は1000本。
そしてワクワク系的に取り組んだ今回の結果を先に言うと、目標達成率426%。
昨年の約12倍、4267本を売ることができたのだった。
彼らがまず行ったワクワク系的な工夫は売り場作り。
この焼き芋の価値を伝えるべく、POPを作成。そこには
「焼き芋名人機、無理言って買ってもらいました」
「サツマイモを厳選して超危険な焼き芋に変身!」
「紅はるか、激ウマなんです!」
「ぜひ感動してください」
などの言葉を。
そうして焼きながらお客さんに声をかけ、売り始めると、そこそこは売れた。
しかし爆発的ではなく、連日売れ残りも出てしまい、毎晩他部署のスタッフに食べてもらう始末。
「焼き時間をお知らせした方がよい」
「たくさん焼いて待っていれば」
などいろいろ改善案も出たが、思うように売れず苦戦を強いられていた。
そんなとき、ワクワク系的な改善点を見い出した。
それは本人曰く、
「動機づけをやっているようでやっていない」
「お客様の目にとまるような仕組みができていない」
という点。
そこで例えば、売り場ではなく園の入り口に、
「あの危険な紅はるか焼き芋あります。ヤバイっす!」
などと書いた大きな看板を設置。
他にも同様の改善を加えることで、1日の最高販売本数はそれまでの32本から、85本に増加した。
そこからは、彼らの改善が勢いに乗った。
店内でのお客さん声にも耳を傾け、同様の工夫を次々と追加。芋も種類を増やし、選べる楽しさを追加。
さらには食べた後の、芋の種類別人気投票を行うなど、どんどん改善を進めていった。
その結果、前述の4267本を達成したのだった。
「前年比12倍」という結果だけを聞くと、売り場でのPOPの書き方など、何か必殺技が当たったように思う方は少なくないが、ワクワク系の現場において、大きな成果とは、往々にしてこのような細やかな改善の結果として生まれる。
ゆえに、ワクワク系に取り組む各社が鍛えるものは「正しく改善する力」。
それが結局は、大きな成果をもたらす必殺技なのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。