在庫がなくとも車が売れる注文販売 「中古車の注文販売で利益をとれているか?」
(※このコラムは、2015年12月のマンスリーレポートに掲載されたものです。)
大規模な展示場を持たない中古車販売業や整備業において、車販を推進するには、お客様の要望車をオークションから仕入れて販売する「注文販売」を避けて通ることはできません。
中古車の注文販売は、店頭にある商品を売るのとは違い、目に見えない商品を販売するため、商談の難易度が高く、お客様の信頼を得られるかどうかが重要となります。
信頼が得られないと車探しを任せていただくことができませんし、商談力を高めないと値引き商談に走りやすくなり、せっかく受注できても薄利であるといったことが起こりがちです。
注文販売でよく聞く失敗例に次のようなことがあります。
- お客様の要望が厳しく、なかなかぴったりの車が見つからない。
- お客様の予算が厳しく、なかなか落札できない。
- 何とか落札できても、適正な利益が取れず、くたびれ損。
注文販売の際、要望車両がオークションでなかなか見つからないケースや、落札できても利益が出ないというケースは、注文の取り方に問題がある場合が多いです。
近年は、整備業やSSを中心にオークション代行が増えており、お客様と一緒に、パソコンの画面でオークション出品車を見て車を選ぶ店舗も多いのはないでしょうか。
出品車を見ながら車両を合意すること自体は悪くはないのですが、最近私が問題と感じているのは、販売利益を手数料でいただく店舗が増えていることです。
結論を言うと、手数料制で注文販売を行うと、利益が少ないだけでなく顧客満足度が高まりません。
透明性を重視し、オークションの落札額まですべてオープンにする店舗がありますが、そうなると、利益は手数料制でいただかなくてはならなくなります。
そういった店舗の落札手数料は、概ね5万円程度か車両の5%程度。
中古車を販売する利益としては、とても十分とは言えません。
名義変更の手数料や納車整備費用は別にいただいたとしても、車両の販売利益が5万円で、お客様に満足なサービスができるでしょうか。
実際そういった店舗では、落札した車両に、出品票には記入されていなかった傷やへこみがあった場合や、予測していない不具合が発生した際、基本的には、お客様にその修理費用を負担いただくか、そのまま納車するそうです。
これでは、顧客満足が高まるはずがありません。
本来、中古車の利益は、「数台に1台は思いがけないトラブルも発生すると考えて、しっかりといただかなくてはならないもの」なのです。
飲食店でもホテルでも、原価を開示して商売をすることはないですし、その必要もありません。
私は、透明性を重視することと、原価となる落札額をオープンにすることは、別の話であると考えます。
購入したお客様に喜んでいただき、末永くお付き合いしたいのであれば、手数料制はやめて、お客様に喜んでいただいた対価としての利益を追求しなくてはなりません。
そのためには、適正な予算で適正な車両を注文いただくための商談力を身に付ける必要があります。
日々、自身の商談を見直し、技術を磨いていかなくてはならないのです。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。