人材育成、鍵は「内観」にあり!
(※このコラムは、2017年2月のチームエルレポートに掲載されたものです。)

昨年は、カーディーラーの店長、サービスマネージャー、営業マンの方々の内観の研修を数多く実施しました。
特に管理者向けには、「M-SIP」(マネージャーセルフイノベーションプログラム/管理者の自己革新研修)という研修を数多く実施し、多くのマネージャーやリーダー層の人材育成に関わりました。
内観とは「自分の内側を観る」という意味があります。
内観の研修では、管理者や営業マン1人1人に、自らの日常の仕事ぶり(その行動や態度や姿勢等)を振り返ってもらい、もっと成長するにはどんな努力をすれば良いのかを明確にし、一定期間、職場でトレーニングを実施します。期間的には1~1.5ヶ月程度になりますが、この短期間で見違えるように成長するケースが多くみられます。ひとつの事例を紹介してみましょう。
ディーラー系列中古車店マネージャー・Oさんの場合・・・

ディーラーの中古車店舗のマネージャーをやっていたOさん。年齢は55歳。大学を出てこの会社に入り、営業マンとして販売実績を積み重ね、販売マネージャーや店長を歴任してきましたが、のんびりとした優しい性格が災いしてか、部下への徹底した指導ができずに業績低迷が目立ち、2年前に今の職になりました。
部下たちには、適当な仕事ぶりが目立ちました。Oさんは、それも仕方ないなと受け取り、あまり厳しい指摘はせず、問題があればカバーするようなスタイルでマネージャー業務をこなしていました。部下たちは、それに甘えて相変わらずの仕事ぶりで、販売実績を伸ばすことができずにいました。
そんな状況の中で、Oさんは上記のM-SIP研修を受講することになりました。研修の中では、上司や部下からのアンケート結果に基づいて受講生の日頃の仕事ぶりを浮き彫りにしていきます。 Oさんは、部下からは「思いやりがあってコミュニケーションも良い」と比較的高かったのですが、一方で「業績達成に向けた意識は高くない」「部下の成長にはあまり関心がない」「ミーティングでのリーダーシップが不足している」という問題を、上司ばかりでなく、部下側も感じていることが明らかになりました。
Oさんはその評価に最初驚いて戸惑っていましたが、内観を進める中、日頃の自分自身の仕事ぶりを客観的に振り返れるようになり、「確かに自分は部下には優しく声がけしているが、本来厳しく問題指摘しなければいけないことを言えないことが多い」と反省しました。一緒に受講していた同僚の店長たちからも「Oさんが厳しく問題指摘しないことが、結局部下の成長を妨げているのではないか?その結果、部下は自分の業績目標も達成できず、給料も上がらない。それでは管理者としては失格だろう」という厳しい意見が出されました。
Oさんは、子供の頃は田舎育ちで伸び伸びと育てられたこともあるのか、人と対立することは避け、むしろ人を気づかい仲良くなることが得意になりました。そういう性格が功を奏して、営業マンとしては好業績をあげてきたようでしたが、年を重ね管理職となり人を育てる立場になると、途端にその役割を果たすことができなくなってしまっていました。今までは、それも仕方ないと諦めていたようですが、今のままでは管理職としての評価も上がらず、このまま職業人生を終えてしまうことになるという強い危機感を持ちました。
Oさんはこの内観をきっかけにして、職場での今までの自分の態度を改め、部下に問題がある場合は、その都度厳しく指導し、また、ミーティングでも今までになく、目標達成に向けて部下との対話を重ねるようになりました。
その結果、Oさんが担当していた中古車店の部下の人たちの仕事に対するモチベーションが上がり、店舗業績も上向きになっていきました。
自己革新を可能にする「内観」のススメ

人材育成については、様々なアプローチがあります。悪い点を指摘するのではなく、良い部分を伸ばしてあげる、そういう方法も有効です。しかし社会に出てキャリアを積み重ねる中で、仕事に対する姿勢や日常の仕事ぶりについて問題があればそれを修正していかなければ、その人の成長は頭打ちになってしまいます。
特にリーダーや管理者という立場になると、部下に問題指摘やアドバイスをすることはあっても、自分がそれを受ける機会は極端に少なくなります。
私たちが行っている内観の研修では、他者からのアンケートや意見を基に自分自身を客観的に振返り、見つめ直すことで、自分自身の現状の問題を正確に理解することができるようになります。問題が解れば、あとはその解決方法を考え、トレーニングを積み重ねることで良くなっていきます。
内観には「簡易内観」「自己内観」「グループ内観」「日常内観」と様々な種類があり、どれも人材育成には有効だと思っています。
人材育成の鍵は「内観」にあり。是非、一度、お試しになっては如何でしょうか。


常務取締役 關 友信 Seki Tomonobu
損害保険会社の営業社員から独立しプロ代理店を経営、その後、自動車販売店での企業を目指し、直営店に入社する。販売店の現場で買取査定や販売業務を経験し、直営店の店長やエリア統括マネージャーとして活躍する。2006年に愛車広場カーリンクのチェーン展開を開始したのと同時に、カーリンク基礎研修の開発に着手、カーリンクチェーンの研修チームを統括する。その後も直営店の出張査定センターのマネジメントやディーラーコンサルティングなど、幅広く様々な仕事を経験、2014年からはCaSSの会員制度を立ち上げ、会員向けのサービスや企画を開発。