『はぁ~面倒くさ~。』と言っていた社員が、『全力で頑張ります!』に変わった理由
(※このコラムは、2015年10月のマンスリーレポートに掲載されたものです。)
「うちの社員はどこか暖簾(のれん)に腕押し感がある。」
「うちの社員には主体性がない。」
そんな自動車ディーラーや整備工場の経営者様の声をよく耳にします。
近年、日本社会には、「ゆとり世代」と言われる若者が増え、世間の風潮はどこか、「ゆとり世代」という言葉だけが先行し、「最近の若者は〇〇だから…。」というネガティブな表現を耳にする機会も増えたように感じます。
『社員教育』 は、多くの自動車関連の企業様において経営課題として掲げられ、社内外を問わず、スキルアップ研修やマナー研修、モチベーションアップ研修等を導入している企業様も多いと思います。それだけ、多くの企業様が、社員育成に関して少なからずお悩みをお持ちなのではないでしょうか。
以前、ご支援先のディーラー様で、社員教育研修を実施したときのことです。
「はぁ~面倒くさ~。」 が最初の一声
初日、研修開始前に、ある若手スタッフの方が発した言葉です。同じように、「面倒だなぁ~」と思っている方もいらっしゃったかもしれませんが、たまたまこの方が言葉にしたのでしょう。
私のつたない経験からではありますが、誰でも本当は、「成長したい」という意欲は、その度合いは違えど、お持ちのはずだと思うのです。しかし、それを素直に表現できない場合が多いのも、また事実だと感じます。
『素直さ』。
人間が成長を希求するときに、まず持ち合わせていなければいけない資質が 『素直さ』 であり、これを表現できる環境をつくることが、社員教育の最初の仕事とも言えます。
「素直さがあれば、人は必ず成長できる。」
まずここで断言したいことは、人が成長するかどうかにおいて、世代は関係ないということです。ゆとり世代だから主体性がないわけでも、成長意欲がないわけでもありません。人が成長するかしないかは、世代や年齢に関係なく、その人自身が謙虚に学ぼうとする素直さを兼ね備えているか、が重要なのです。
社員に成長してもらうためには、その方が持っている 『素直さ』 を引き出し、尊重し、本人が表現できる環境やきっかけをつくってあげることが必要です。
「とにかく楽しく、明るくをモットー」に
企業様で様々な研修を実施する際には、いつも、社員の主体性を素直に表現できるきっかけを提供するよう設計しています。
参加者が自由に発言できない、あるいは、しにくいような堅苦しい雰囲気では、そもそも主体性を禁じているようなものです。
また、人の話を長時間、聞き続けることも、慣れない人にとっては大変な苦痛を伴うこともあります。
そこで、研修の最初に、4~6名程度のグループをつくります。
これくらいの人数だと、グループ内の結束力が高まり、ディスカッションを重ねるうちに、単なるグループが、やがて同じ目的や価値観を持つ「チーム」へと変化していくのです。
グループディスカッションがチームの結束力を高める
グループでは、メンバー同士のディスカッション時間を多めに取り、日常業務やお客様への接客・応対をテーマに、参加者が気軽に意見を発言できるようにします。
同じ職場やチームの仲間と話をすることで緊張もほぐれ、さらには、日常の課題をテーマに設定することで、チームメンバーの考え方や取り組みが共有され、多くの気付きを得ることもできます。
決めたことを実行する仕掛け ~チーム対抗クイズ大会が面白い~
こうしたチーム活動は、定期的に実施する必要があります。そして、前回決めたことがしっかり実行できているか、また、その手応えはどうかを、しっかりと振り返ることが重要です。
とは言え、普通に振り返るだけでは堅苦しい雰囲気になり、つまらなくなってしまうもの。そこで、ゲーム形式にして楽しく振り返りができないかと考えました。
私のご支援先ではそれ以来、毎回冒頭に、クイズ形式のゲームを実施しています。参加者の緊張がほぐれ、場が温まるのが伝わってきて大変効果的だと感じています。参加者が、ストレスなく気軽に参加し、ワイワイ楽しみながら学べる環境をつくることは、学習効果を高める重要なポイントです。
ちなみに、クイズはすべて4択で、5問ずつ出題しています。場の空気も和み、狙い通りの効果が見られました。
いわゆる『良い言葉』は世界共通
また、研修では、偉人の言葉を学ぶ時間も設けています。
マザーテレサの言葉に、『思考に気をつけなさい』という名言があります。―思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になり、行動になり、習慣になり、性格になり、運命になる―思考に始まり、運命で終わるこの言葉を要約をすると、『思考に気をつけなさい それはいつか運命になるから』となるのでしょう。
このような、偉人の名言や考え方は、あまり知られていませんし、教えてもらう機会もありません。特に、若い世代の方には目からウロコのようです。このような良い言葉や、良い考え方を学ぶことで、自分の生き方や考え方に、自然と目が向くようになります。
『全力で頑張ります!』
冒頭にご紹介した、「はぁ~、面倒くさ~。」と言ったその彼は、数ヶ月後、力強くこう宣言しました。何度か前述のようなチーム活動をするうちに、素直さを発揮できる環境に、まわりが変化したのだと思います。
人は誰でも、本当は 「頑張りたい!」「成長したい!」と心の中で思っているものです。しかし、自分だけが張り切ると「あいつ、何を張り切っているの?」と思われるのではないか、という雰囲気が、本心とは裏腹に、「はぁ~面倒くさ~。」 と言わせてしまうのです。
つまり大切なことは、会社の雰囲気が、素直に「頑張る」 と言える環境になっているかどうか、ということなのです。
私はこうした経験から、社員の主体性を引き出すプログラムとして「ディーラーや車検チェーン向けの主体的接客力強化プログラム」を開発しました。前述のノウハウをふんだんに盛り込んだ社員教育プログラムで、おかげさまで好評を頂戴しています。
カーリンク事業部長/シニアコンサルタント 長尾 剛典 Nagao Takenori
入社後、直営店でキャリアを積み上げ、出張買取業務、加盟店への出向支援業務等、多くの現場経験に積み、FC事業部に配属となる。委託販売、買取、小売りの最新のノウハウを保有し、業界情報や仕組みにも精通しており、成果創出への執着心は極めて高い。担当店舗での成果創出スピードは非常に速く、担当した加盟企業オーナー、スタッフからも高い評価を受けている。
★仕事のモットー 「全体を俯瞰し、物事を本質から捉える」