【小阪裕司コラム第26話】これらは決して奇異ではなく

【小阪裕司コラム第26話】これらは決して奇異ではなく

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第26話】これらは決して奇異ではなく

先日、全国の住宅関連企業が一堂に会し、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)を学び実践する講座で、こんなご報告をいただいた。

まずは、シロアリ予防・駆除の会社の社員さんからのもの。彼はワクワク系を学び始めて約1年。今回報告してくれたのは、顧客との絆作りの実践だった。

なかでも目を引いたのは顧客とのコミュニケーションツールであるニューズレターを発行し、そこで二郎系ラーメン好きの彼は、ずっと二郎系ラーメンの話を書き続けているというものだ。

こういう話題をワクワク系では「自己開示情報」と呼び、お客さんへの発信を奨励している。なぜならこのような情報が、お客さんとの絆を育むのに有効だからだ。

果たして彼の場合はどうなったのかと言えば、セオリー通り顧客との絆は徐々に深まり、今では顧客から親しみを込めて「二郎」と呼ばれることもあるとのこと。(ちなみに、彼の名前は二郎ではない)

また、この実践が早くも実を結び、今年の施工依頼件数は前年比120%と好調だ。
もちろんそれだけが業績好調の理由ではないが、かといって他に新たに取り組んだことも特になく、確実に絆作りには効果があると彼は言う。

もうひとつ取り上げたいのは、ある地域密着型の工務店社長からのご報告だ。同社はここ4年熱心にワクワク系に取り組み、目を引く最近の実践報告のなかでは、地元の行政主催のイベントに出店したものがあった。

そこでは、よくある洗浄便器などの住宅関連展示ではなく、彼の顧客でもある居酒屋の冬の鍋メニューを決める投票イベントを行い、大人気。200票以上を集める盛り上がりだったという。

もちろん、同社の4年間の取り組みはこうしたイベントだけではなく、ワクワク系でやると良いとされている多くのことに地道に取り組んだ。

その結果として最後に彼から業績の推移の発表があったが、まだ赤字だった4年前からワクワク系の実践を始め、業績は回復、黒字に。

ワクワク系の顧客化と相まってエリアも絞り込み、地域密着に徹した結果、コストも大幅に削減。現在では受注の70%以上がリピーター、成約率は70%強と言う。

この会合でもお話ししたが、彼らが日常的に行っていることは、少なからぬ人にはまだまだ奇異に映るだろう。しかしこれからの社会で選ばれる会社・店・ビジネスパーソンになるには必要不可欠な営みであり、彼らの結果がそれを示している。

一人でも多くの方にこのことを知ってもらいたいものである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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