【小阪裕司コラム第40話】商いを支えるのはいつも顧客

【小阪裕司コラム第40話】商いを支えるのはいつも顧客

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第40話】商いを支えるのはいつも顧客

ここ数回連続で、商売を営んでいるとしばしば起こるアクシデントにまつわる事例をご紹介している。今回の新型コロナウイルス問題のようなことはしばしば起こることではないが、前回までの例のように、地域での災害は毎年のように起こる。
また、個々人、個々の会社には、予期せぬアクシデントは、さらにしばしば起こる。

たまたま今年の1月に、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)のある会員さんから、そのようなお手紙をいただいた。最近ウェビナーなどでその一部をご紹介しているが、反響が大きいので、ここでもご紹介したい。

そのお手紙は、ご夫婦で美容院を営んでいる方からのものだ。
「ご夫婦で」といっても、奥様はまつエク・ネイルの担当。
ヘア担当はお一人だ。

書き出しは、「ワクワク系をしていて良かったなぁ~と思ったことについて、感想というか、お礼みたいな感じです」と始まり、こう続いていた。

「2018年に入会して、毎日楽しく仕事をして売り上げも順調に上がってきていました。しかし去年の4月に『脳動脈瘤』が出来ているのが見つかり急遽、入院することになりました。4月末に見つかり、5月末に検査入院、6月初めに手術、とお客さんにも予約を変更してもらったり、お断りしたりとすごく迷惑をかけてしまいました」。

しかし、彼のアクシデントはそこに留まらなかった。手術のために検査をしたところ、なんと癌が見つかり、転移の恐れありとなったのだ。そのため、急きょその手術を優先させ、7月初めに癌を手術。

幸い転移もなく、腫瘍の種類も比較的優しいものだったので、抗がん剤は回避。
次いで9月には脳動脈瘤の手術となったのだった。

彼曰く、昨年は、5月中旬までは通常通り仕事をしていたが、それ以降は当然のことながら店を休みがち。まともに仕事ができるようになったのは12月中旬。トータルで2か月以上は完全に仕事をしていない状況だった。

しかし顧客らは快く予約の変更やキャンセルに応じてくれ、いざ仕事が再開されると、あっという間に予約を埋めてくれた。本当にお客さんに恵まれてるなぁ~と実感したとのこと。

そして売上は、そのような2019年だったにも関わらず、2018年と比較して、たった3%しか落ちなかったのだった。

今、社会全体は新型コロナウイルス問題で混沌としている。
その影響が業績に及んでいる会社も少なくない。しかし、こういうときだからこそ伝えたいことは、どんなときも、商いを支えるのは顧客だということだ。

何があろうと、あなたが再び立ち上がることを待ち望む顧客。
その存在こそが、商いの盤石の基盤なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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