【小阪裕司コラム第46話】コロナの苦境の中、この飲食店では
【小阪裕司コラム第46話】コロナの苦境の中、この飲食店では
今、私が主宰しているワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)では、この新型コロナ情勢下で直接悪影響を受けている業種からも、奮闘ぶりが続々届いている。
そのなかの飲食業。今週、東京都内の、ビジネス街と老舗百貨店の立ち並ぶ場所で複数の飲食店を営む方から、ご報告をいただいた。
彼が経営するうちの1店は、ジビエ料理が名物の店。
猪や熊の肉などにお酒を合わせ、舌鼓を打つ、まさに「夜」が勝負の店だが、緊急事態宣言下の休業要請を受け、ご報告時点では休業中。休業を決めた時点ですでにこの状況は長期化すると考え、テイクアウトやウーバーイーツも対応した。
しかし始めてみるとこれだけでは厳しそうな感触もあり、さらに考えた。
そこで目を向けたのが、自店のメインの食材であるお肉だ。
そもそもジビエゆえお肉に独自性もあり、こだわって仕入れているので素材自体が素晴らしいもの。ネット販売や配達にも展開できるのではないかと考えた。それではと、まずは保健所に向け動いた。食肉の販売許可が要るからだ。
店主によると、担当の保健所では現在の飲食店の状況に大変同情的で、担当の方が普段担当いただいている方だったこともあり、大変スムーズに申請も通り、許可を取得。販売ができるようになったことで、事業の選択肢が広がったという。
別の、あるおまかせコース料理のみの完全予約制のレストランからもいただいた取り組みがある。この店では、緊急事態宣言以降、すでに入っていた予約のキャンセルも含め、先々の予約がゼロになった。
それまでは予約が取れない店として名をはせていた店だ。しかしこの店の店主も、すぐに動いた。まずは家庭にある調理器具や調理家電でできるメニューを考え、動画を作成。配信し始めた。
これが顧客に予想以上に好評で、ここに、先のジビエ料理の方のような動きを合わせていこうとしている。
彼らの動きが今後どういう結果を生んでいくかはこれからだが、私が今日ここでお伝えしたいのは、この彼らの「動き」だ。先のジビエ料理店主の報告にはこうある。
「もしワクワク系を学んでいなければ、お肉屋さんも考えてないでしょうし、
テイクアウトも上手くいきそうにないなと考えた時点で絶望的な気分だったと
思います。しかし、今は自分で考え、動くことができます。こんなときですが、
新しいチャレンジドキドキすることができます」。
今、多くの方々が苦境にある。
しかしそんなときも「考えるクセ」「考える力」が物事の見方を変え、前へ進む力をくれる。どんなときも、それがあれば、未来へ道をつなげていけるのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。