【小阪裕司コラム第102話】美味しくお肉を焼いてもらうには

【小阪裕司コラム第102話】美味しくお肉を焼いてもらうには

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第102話】美味しくお肉を焼いてもらうには

今日もさらに引き続き、コロナ禍で奮闘する、ワクワク系マーケティング実践会(この コラムでお伝えしている商売の理論と実践手 法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある飲食店からのご報告を紹介しよう 。
前回、前々回とはまた別の店だ。

今回いただいた報告のタイトルは「シールをあげる事でお客様が行動してくれるようになった」
店主が営むバーベキュー場での取り組みと成果についてだ。同店の名物は厚切りステーキ。
自慢の肉なのだが、課題があった。
それは同店がバーベキュー場ゆえ、焼くのは店側ではなくお客さんであることだ。

このステーキ本来の味わいを味わってもらうには、「溶岩プレートでじっくり肉汁を残した状態でミディアムレアに焼き上げて、1.5センチぐらいでカット」の必要がある。
さらにそれには、焼く前にプレートが十分熱せられていること、焼き方、焼いた後に銀紙に包むことなど幾つかのチェックポイントがあり、お客さんにとってはなかなか高度だ。
そこでそれらを店主からの「焼き方講座」と題して詳しくマニュアルにしてみたが、なかなかその通りに焼いてはくれない。

目を離すと「絶対に美味しくない焼き方」をして食べてしまう。
その解決にはスタッフが付いて肉を焼かなければならず、忙しいときは手が回らない。
本来の味を味わってもらえないことを残念に思っていた。
こんなとき、あなたならどんな解決策を考えるだろうか?
高度で細やかなマニュアルを、どうすればお客さんに実行してもらえるだろうか?

そこで彼が思いついたことは「ステーキ検定」
実践会で他の飲食店会員さんが行っていたものを参考にしたものだ。
大雑把に言うと、焼いたステーキの断面を写真に撮ってLINEに送ってもらい、店側が合格とするレベルに上手に焼けていればステッカーをもらえるというものだが、思いついたら即実行。

早速来店した会社員らしき5人組に説明すると、「え!検定合格するとステッカーもらえるの?」と上々の反応。
このグループ内の焼き係の人が上司らしき人に「ステッカーもらえるかはお前にかかってるからな」とプレッシャーをかけられるなど盛り上がり、無事に美味しく焼くことに成功。

その後も説明したお客さんの8割方がチャレンジしてくれ、問題は解決したのだった。言い添えておくが、この成果のポイントは「検定」や「ステッカー」ではない。
店主は「しなくてはいけない作業」が「検定に合格してステッカーを獲得するゲーム」に変わったと分析していたが、正確な分析だ。
この成果の秘訣、あなたはどこにあると思うだろうか?

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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