【小阪裕司コラム第265話】「子ども店長」から見えるものとは2

【小阪裕司コラム第265話】「子ども店長」から見えるものとは2

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第265話】「子ども店長」から見えるものとは2

 今回は前回の続き。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、和菓子店からのご報告。同店の「子ども店長」というイベントの展開が物語る深いお話だ。

 昨年のGWに開催され、大人気だった「子ども店長」。昨年参加されたご家族から「今年はいつですか?」という問い合わせもあり、今年も早々に実施を決定。告知を始めるとすぐに満席に。昨年予想を超える仕事ぶりを見せてくれた2人兄弟のご家族には個別オファーを出し、最も忙しい5月5日に参加してもらうこととなったが、そんな申し出もとても喜ばれ、当日を迎えると子供たちのやる気が炸裂。「次は何をするの?」「できます!」「これもやりたい!」、ついには「もっと仕事ちょうだい!!」と今年も大変な仕事ぶりだった。

 前回もお伝えしたが、このイベントは「子ども和菓子教室」や「子ども用の仕事体験会」ではなく、ガチで仕事。繁忙期でごったがえしている店の工場やバックヤードにそのまま入ってもらって、普通に仕事をしてもらうものだ。「にも関わらず」と店主は言う。「イベント期間中はそのこども店長の姿を見た他のお子様から『やりたい!』と言われますし、すぐにLINEをご案内したらその場でご登録していただきました」「この期間中は普段は手伝わない娘も大活躍してくれ、妻の甥っ子に至っては山梨へ遊びに来ているのにも関わらず、当店で仕事したいと言ってくれます」。何がこれほどまでに子供を惹きつけるのか。

 それを、店主は次のように振り返る。「娘からしてみたら、当店にGW期間は友達やいとこが手伝いながら遊んでくれるし、お客様と仲良くなれますし、不思議な場所なのかもしれません。現在、求められているものが『人との触れ合い』『非日常な体験』」『出会い』それらのようなものであると、今回のお客様を通じて感じ取れました」。

 また次の、参加者のお母さんからのLINEメッセージには、「何が子供たちを惹きつけるのか」の答えが垣間見える。「褒めてもらうためではなく誰かのために自ら考え行動する。その行動を認めてもらう喜びを知る。まさにこれからの生きる力を学んでいるんだなーと感じてます」。「生きる力」を学べる、「人との触れ合い」「非日常な体験」「出会い」がある。だからこそ仕事も楽しく感じる。今、巷には、そんな場がどれだけあるだろうか?

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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