【小阪裕司コラム第264話】「子ども店長」から見えるものとは1
【小阪裕司コラム第264話】「子ども店長」から見えるものとは1
今回は二回に分けて、5月頃当コラムで少し触れた「子ども店長」というイベントの展開が物語る深い話をしよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、和菓子店からのご報告だ。
話は昨年に遡る。GWを控えて店主は、何かイベントを行いたいと考えていた。そんな折、当会のオンラインミーティングで出た「子ども店長」という言葉にインスパイアされ、早速検討。自店なら何ができるかを考え、やってみることにした。
期間は3日間と決め、店長用の名札とお礼の品(五百円くらいの色鉛筆セット)や賞状を用意し、LINEで告知を始めるとすぐに応募が。早々に予定人数は埋まったがそれだけでなく、下見に来るお客さんや、友だちやおじいちゃん、おばあちゃんも誘うお客さんがいるなど、予想以上の反響が。そうして順調に当日を迎えることとなった。
イベントは3日間に分けて行われたが、どの日も子供たちは予想以上に大活躍。率先して仕事に臨み、「次は何をしたらいい?」と聞いて来る子も。店主は当初イベントに備え店を片付けておこうとしたと言うが、結局繁忙期のままごったがえした中でのガチの仕事。しかし子どもたちは、その普段のままのお店の中で、実に生き生きと働いていたという。また、普段なかなか手伝ってくれない店主の娘さんも今回は感化されたのか率先して手伝いに。子ども店長らともすぐ打ち解けていた。
一方、その間親御さんたちはといえば、同店内にあるカフェでお茶をしながら見学。そこでの支払いやお土産のお菓子の購入、中でも祖父母様までお越しの方は彼らも含め実にたくさんの買い物をしていただき、それが狙いではなかったものの、嬉しい驚きだった。
そうしてどの日も最後にお礼の品と賞状を授与し、無事、笑顔のうちに終了となったのだが、その後のお客さんの動きもまた驚くものだった。賞状を自宅に飾ってくれる方、お手紙や紙粘土作りのお菓子を送ってくれる方、学校などでこのイベントを紹介してくれる方等々。みなさんすぐに来店されまたたくさんの買い物も。
参加された方々が口々に「素敵な体験をありがとう!」と言った当イベントだったが、1年後の今年、さらなる展開を見せることとなる。この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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