【小阪裕司コラム第260話】「ようこそ先輩!」1
【小阪裕司コラム第260話】「ようこそ先輩!」1
今回は、顧客コミュニティの育成・活性化のお話。お店のコミュニティがさらに輪を広げ、お客さんの人生に良い影響を与えていく好例。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の文具店からのご報告だ。
画材も充実している同店では、近年、同店主催のアートスクールが盛況。特に中高生が美術系大学への進学を目指すクラス「イーゼルクラス」は、いつも満席だ。しかしスクールの性質上、必ず卒業がある。喜ばしいことではあるが、同時に寂しく、県外の大学へ進学してしまうので、教室にも来られなくなる。この「卒業」を、何かプラスなことに変えられないか、と考えていた。
そこで昨年の夏、とあるイベントを開催することにした。その名もNHKの某番組を参考にした「○○(店名)へ、ようこそ先輩!」。イーゼルクラスを卒業し、実際に美術系大学へ進学した学生たちに、現在の生徒と交流したり、課外授業をしに来てもらうイベントだ。イーゼルクラスが始まって5年程。最初の卒業生は今大学3年生。その後も毎年進学者が出ており、彼らに連絡をしてみたところ、実習で来られない2人をのぞき、6人中4人が来てくれることになった。
これは、現在美術系大学を目指している地元の中高生にとってまたとない機会だ。というのも、美術系への進学に興味があっても、実際に学生生活はどんな雰囲気なのか、進路はいつ決めたのか、受験はどんな感じだったのか、入ってみてどうだったかなど、今現在学生生活を送っている先輩にリアルな本音を聞ける機会は、彼らの身近になかなかないからだ。
そうして開催してみると、大好評。卒業生が受験や生活についてなど疑問に答えるだけではなく、中高生に対し実際の絵の描き方のレクチャーなど、実技面での指導をしてもらうことで、教える方の自信と勉強になるとともに、教わる中高生にとっても大きな刺激になった。先生に教わるのではなく、先輩に教わることで、「自分もこんなふうになれる!」とのリアルな想像につながり、意欲的に聞き入る中高生が見られた。
実際「教わる」ことにおいては、知識・技術だけでなく、「こうなりたい」「なれるかも」がリアルに増幅することの影響は大きい。そして今回、それ以外に思わぬ「やってよかった」があった。それはどんなことか。この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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