【小阪裕司コラム第257話】商売にこんな変化を起こすには2

【小阪裕司コラム第257話】商売にこんな変化を起こすには2

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第257話】商売にこんな変化を起こすには2

 今回は、前回の続き。商売における業績の変化は何によって起こるのか、その本質を物語るお話だ。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の和菓子店。同店の昨年の好業績を、店主は自らの変化が一番の要因と分析する。「『値上げと休日を増やす』。以前なら全く思い付かない、そんなことしたらそれこそ逆に駄目になる」という思考が変わったことが大きいと。そんな彼の店ではさらなる変化が起きていた。

 それは例えばこういうものだ。同店では最近「子ども店長」という、お客さんのお子さんによる1日店長企画を行っているが、これが好評で、同店を家族連れで訪れる顧客も増えている。そんななか、店主らが家族で旅行に出かけると、店主の奥様も「お客様へ何かお土産を」と、自然に考えるようになり、お客さんの方もしばしばお土産を手に店を訪れるようになった。

 さらにはお客さんのお子さんが店主のお子さんにお土産を買って来るなど、以前では考えられないような交流が増えて来た。そして何より、と店主は言う。「以前は休んでどこかに行ったなんてことをお客様へ伝えては良くない、申し訳ないそんな気持ちであったことをふと思い出しました。今とは楽しさは雲泥の差です」。まさにこれも、思考の変化の賜物である。

 ではその「思考」はどうすれば変わるのか。その最も効果的な手立ては、「自分の努力」ではなく、「周りの影響」。彼はこう言う。「一般的には両立は難しいとされることもワクワク系の先輩方は両立できている。そんな先輩方を見ている自分はそれが当たり前になっている」。

 つまり、簡単なことだ。「休日を増やすと、店はだめになる」と自分が思い込んでいたとしても、周りに「休日を増やして、店がどんどん繁盛している」人たちが当たり前のようにいると、そちらが「当たり前」になる。簡単には踏み込めない自分がいても、強く背中を押してくれる存在になる。

 まさにこれこそが自分に、ひいては会社の業績に変化をもたらす最も強力で確実なものなのである。 彼からの報告書は次の言葉で締めくくられていた。「自分を犠牲にして間違った努力を続けていたのが以前の私です。このように正しい価値・努力に気付き行動すれば、自ずと見える世界が変わってくるなんとなくですが実感できてきました。今後も様々な呪縛を解いていきたいです」。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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