【小阪裕司コラム第34話】病気を忘れられる病院

【小阪裕司コラム第34話】病気を忘れられる病院

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第34話】病気を忘れられる病院

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある病院からのご報告。

この病院は、来院者に「ここに来たら気持ちが楽になった」「明るくて気持ちがいい」と言われる病院だ。ただ、そうなるための取り組みはこの半年ほど前からだった。

その病院の事務局長さんからのレポートには、昨年末、こういうことがあったと、記されていた。
ある夜のこと、自宅近くの急患センターに行かれた患者さんが、当院を紹介され、車で30分ほどかけて来院した。

高齢のご夫婦で、ご主人が電灯の交換をしようとして脚立から落ち頭を打った。そこで受診となったのだった。

CTでの検査の結果異常はなかったのだが、奥様が待ち時間の間院内をあちこち見て回ったらしく、まずは受付のスタッフに「ここの医院は色々な飾りつけがしてあってとてもきれいですね。なんだか私の気持ちまで明るくなりました」と言われ、それからひととき、そのスタッフに自身の近況を話された。

そのとき、事務局長もその場にいたのだが、さらにその方はこうおっしゃった。

「最近いろんなことがあって、さっきまでの私はまるで崖っぷちにいるような
気持だったけど、ここに来て院内のいろいろなものを見ていたら、なんだか
気持ちが楽になったのよ」

「他の病院は、堅いイメージの張り紙や無機質な色の壁などから、なんだか気持ちまで暗くなるのに、ここの病院はとっても明るくて気持ちがいいわね」

「いろいろな勉強会もされているので、さっそく明日は参加させていただきます」

そして、次の日に予定されていた東洋医学の食の先生の相談会と午後からの講演会も申し込まれ、とても明るくなってお帰りになったということだ。

この半年にこの病院が取り組んだこと、それは季節感も含め、院内の掲示や飾りにテーマを決め、こまめに変えることだ。

取り組み初めは、昨年導入した体成分測定器に関連して運動会をイメージした絵を張ったり、当院で行っているデイケアの写真を楽しげに飾り付けていたが、徐々にエスカレート。

10月になると病院の大窓を使ってハロウィーンの飾りつけを行い、その前で患者さんらの写真を撮ってあげたり、「しあわせコーナー」と銘打ち、付箋に「いいことがあったこと」を書いてもらい、子どもたちにはお絵かきをしてもらい張り出した。

さらに12月はクリスマスの飾り付け。

ツリーはもとより、患者さんにも参加してもらい、たくさんの雪だるま飾りを作るなど、どんどん院内は明るくなっていったのだった。

近年減っていた来院患者数が昨年には増えてきていると、事務局長。今回の出来事でスタッフらのモチベーションもさらに上がり、さらなる「来る人が元気になる病院」になるべく、歩を進めている。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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