【小阪裕司コラム第345話】握力計でレストランの売上が増えた!?(1)
【小阪裕司コラム第345話】握力計でレストランの売上が増えた!?(1)

本年、ワクワク系マーケティング実践会では、“一見 なんでもないこと”、それをやったからといって直接顧客増や売上増にはつながらないと思われがちなことを重視している。なぜなら、まさにそういうものこそが成果を生むカギになるからだ。そこで今回は、その実に興味深い実例をご紹介しよう。
あなたがレストランに食事に行ったとき、入り口脇のテーブルをふと見るとそこに握力計が置いてあり、そこにすでに数名の書き込みのある握力記録表と「記録をぬりかえろ!」の文字があったら、どうするだろうか?
ある日、実践会員同士の会合で、ある参加者が握力計を持参してきた。それをネタに、彼らだけでなく店内の他のお客さんも巻き込んで盛り上がる様を見て、この会合に参加していたワクワク系のレストラン店主は考えた。これを自店でやったら盛り上がるに違いない。そこで早速握力計を購入。冒頭のしつらえになった。
そうして始めてみたところ、予想以上に盛り上がり、そこで見られた光景はまさに店主が想像していた以上のものだった。それは例えば、男同士で誰が一番か競う、女性同士でキャッキャと言いながら楽しくやる、彼女に俺の力を見とけとばかりに張りきる彼氏と横で笑う彼女、息子に勝ってドヤ顔な父親、上司と部下でガチンコの無礼講な握力大会、真面目に食前と食後の記録を測定する人、記入されている最高記録を抜かそうと頑張る熱血な人、といったもの。そこには「“笑いと微笑ましい空間”が存在していた」と店主は言う。

もちろん、この握力計があるからといって、お客さんが「あの店、握力計があるんだ!行こうよ!」となるわけではなく、直接売上につながるものではない。しかし、「このような“笑いと微笑ましい空間”があるかないかはその後の業績を大きく左右する」と店主は言う。
そうして、想像以上に来店客の足を止め盛り上げる効果を持っていた握力計は、これをきっかけにそこに置いてある他のもの、お店の交換日記や人気メニューの選挙に参加してくれる人の数、ひいてはこの店の会員登録数が増えるという結果ももたらした。会員登録数が増えることは、その先のリピート客増、ひいては売上増にもつながっていく。たかが握力計、されど握力計というわけだが、この話を聞いて、あなたには握力計がどのような存在に見えてきているだろうか?そしてさらにこの話には興味深い後日談がある。この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
おすすめの関連記事
-
-
【小阪裕司コラム第344話】「絆作り」はどんな業種でも
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ今回は、お客さんとの絆作り活動の意義と意外な盲点のお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある病院からのご報告だ。 同院では、患...
-
-
【小阪裕司コラム第343話】100均のチョコレートでも
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ前回、表札を取り付けるという工務店にとっては何でもない日常作業が、お客さんにとっては大切な儀式となり、思い出深い体験となる話をした。今回も同様の事例をお話ししよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えして...
-
-
【小阪裕司コラム第342話】「作業」が価値ある「儀式」になると
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ今回は、自分たちにとっては日常作業のささやかなことが、お客さんにとっては大切な儀式となるお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあ...
-
-
【小阪裕司コラム第341話】人生最後の希望が叶う場所
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ前回、前々回と、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の店でのエピソードを通じて、今日の社会での店の役割・あり方を考えた。今回も同様のエ...
