【小阪裕司コラム第36話】結果が出ないときの改善の決め手とは1
【小阪裕司コラム第36話】結果が出ないときの改善の決め手とは1
あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)の、アウトドア用品のネットショップからのご報告。
この店の主力商品にシュラフ(寝袋)がある。メーカーは「国産」「高品質」を謳い文句に高い人気を誇っており、同社でも別注カラーのシュラフを製作してもらい、高単価ではあるものの、月間20~60 個ほどの販売実績がある主力商品になっていた。
そんな折、このメーカーが国内での生産能力を超えてしまったことから、中国の
メーカーに生産を委託する試みを行った。もちろん「国産」は謳えなくなるが、
品質が守られて納期通りに入荷するならメリットの方が大きいと判断し、半年分
の数量を発注する事にした。
そして数か月後、予定通りに入荷、品質も文句なかったことから販売開始。
お客さんに誤解を与えないよう、商品ページには中国産であることを正直に
書き、今回諸経費がかさんだことから、若干の値上げも行った。
そこで問題が生じた。売れないのだ。
2ヶ月間様子を見たが、売れ行きはかんばしくない。
そこで価格を元に戻し、2週間様子を見たが、変わらない。「ワクワク系に入会する前ならここであきらめて、安売りで処分して『やっぱり国産でないと売れないか…』となっていた」と店主は言う。
しかし、「今では『売れるようになるまで改善を続ければいい』と思えるようになり、我ながら心境の変化に嬉しくなりました」。
そこで行った改善は、「この製品の原産国は中国ですが、正規のN社ブランド製品でありメーカー保証の対象ですのでご安心下さい」としていたメインの説明文を変えること。具体的には、次のように変えた。
「高品質ダックダウンとナイロン生地を日本から輸送し、海外で縫製する事によりコストダウンを実現しました。工場の選定では縫製技術が日本国内レベルと同等かそれ以上という条件で厳選しています。N社による検品でもハイクオリティーな仕上がりが確認できており、メーカー保証の対象商品となっております」。
しかし売れ行きは変わらない。
そこで次は少し視点を変え、工場がキャパオーバーで困っているという窮状を訴え、工場は中国でも信頼できるところを選んでいる、という内容を伝えるよう説明文を改善し、さらには、不本意ながらポイントを10 倍にしてみた。
しかし、それでも売れ行きは改善しない。そこで店主が取った策は何か。
この策が結果的に不振時の約9倍近い売上をもたらしたが、その決め手は何か。
この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。