【小阪裕司コラム第67話】客足が戻る店・戻らない店
【小阪裕司コラム第67話】客足が戻る店・戻らない店
先日、あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)の和菓子店の社長から、コロナ禍での奮闘のお話をうかがった。
この話が実に示唆に富んでおり、ここで詳細まではお話しできないが、エッセンスを分かち合っておきたい。
同社は、著名観光地一帯に店舗を展開する和菓子店。同社社長のお話でとりわけ印象深かったのは、4月からの緊急事態宣言下、全店を閉め、その後営業を再開したときのお話だ。一気に客足が戻ってきた店とそうでない店が大きく分かれたというのである。
その違いを分析してみると、戻ってきた店は繰り返し買いに来てくれる地元の方々が多くいる店。そうでない店は、主にその日限りの観光客がメインの店だった。
もちろん、同店が立地しているのは著名な観光地。同社自体が著名な地元ブランドであり、観光客のお土産需要も大きい。「その日限りの観光客がメインの店」が悪いわけではない。しかしコロナである。
この4月、5月、彼の言葉を借りれば、「人通りは一気に消えた」。6月以降もその状況は、大きくは変わっていない。そんななかで営業を再開しても、なかなか客足は戻らない。
しかし、繰り返し買いに来てくれる地元のお客さんがいる店は戻っている。実はこの違いが今日の商売の明暗を分ける、最も重要な違いだ。
その違いを私がよく使う言葉で言えば、観光客がメインの店は「フロー型の商い」を行っていた店。地元のお客さんがいる店は「ストック型の商い」を行っている店だ。
社長自身、今回のことがあるまで、この違いに気づかなかった、目を向けていなかったと言うが、ここがカギだ。
そして、この違いの重大さに気づいた同社は、地元のお客さんをさらに強固に“顧客化”するために、顧客リスト作りとその整備、顧客へのこまめなアプローチに注力している。
もしこれを読んでいるあなたがお店を経営していて、幸いなことに客足が戻ってきているとすれば、それは喜ばしいことだ。しかし、安心する前に自問自答してほしい。自分の店や会社は、顧客をストックしているだろうか、と。
当メルマガコラムでは、3月以降、このコロナ情勢下でなお結果を出している様々なお店や会社(しかも、およそ同業者は売上を大きく落としている業種で)を取り上げているが、それらの会社には共通していることがある。
それは顧客をストックしていることだ。
これ以上詳しいことはいずれYouTube小阪裕司チャンネルで語ろうと思うが、まずはあなたにも自問自答していただきたい。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。