【小阪裕司コラム第69話】この発想と成果の源は1
【小阪裕司コラム第69話】この発想と成果の源は1
先日、ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のあるお店から、レジ袋有料化での新しい対応の、実にワクワク系らしいご報告をいただいた。
その取り組みも大いに学びになるが、このエピソードからはもうひとつ別の学びもある。
ご紹介しよう。
7月1日から始まったレジ袋有料化。同店でも開始以来、レジ袋の利用はめっきり減り、多くのお客さんはマイバックを持参して来たり、そのまま持って帰るようになった。
その際、「テープ貼りますね」と、お買い上げになった印にテープを貼るのだが、同店では市販のストアテープを貼っていた。しかしこの店はワクワク系、これではなんだか味気ないなと感じ、あることを思いついた。
それは、ストアテープの代わりに、同店オリジナルのラベルを作って貼ることだ。
さらにもう一工夫加え、パートさんごとに「マイカラー」「マイフォント」を決めてもらい、自分のラベルには一言メッセージを書いてもらい、お客さんがお買い上げされた商品に、担当した人が自分のラベルを貼ることにしたのである。
そのラベルも資料として添付されていたが、たしかに様々な色とフォントのラベルがあり、そこには「まいどありがとうございます!パートの〇〇(名前)です!」という挨拶に続き、
「毎日2匹の猫にいやされてます」
「娘は高校3年生。付属高校でよかったです」
「幼稚園が夏休みに入ったので、いつもより多く働いています」
など、それぞれのメッセージが書かれていた。
それらを実際に貼り始めると、お客さんとは「へえー。猫が2匹もいるのね」
「〇〇さんの娘さん、どこの付属?」と会話が弾み、味気なさもなくなり、
新たな会話の機会となったのである。
今回の実践が実にワクワク系らしいのは、ストアテープを貼るだけでは「味気ない」と感じる感性、その解決策をお客さんとの楽しい会話の機会にしてしまう発想にあるが、もうひとつ私が着目した点がある。
それは店主がこの着想を得たのが、以前このコラムに掲載したことのあるものも含む、2つの事例からだったことだ。ひとつは、ある漬物店における商品ラベルの実践、もうひとつは、あるバーにおける名札の実践だ。
そのご紹介は次回に譲るが、なぜ私がそこに着目するのか。
それは今日、この変化が激しく速い社会では、一人で考え行えることには限りがあり、他者の知恵を自分の知恵として使い、課題解決の着想を得、結果を出し続けていく必要があるからだ。
それは「集合知の活用」というものだが、それが今回の成果に潜む重要な点なのである。続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。