【小阪裕司コラム第87話】すべての商いは教育産業になる

【小阪裕司コラム第87話】すべての商いは教育産業になる

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第87話】すべての商いは教育産業になる

今月下旬には、私の久々の著書が出る。そこで説いている様々なことのなかに、今後の商いの幾つかの潮流について書いた章がある。今日はそれを少し抜粋、一部改変してご紹介しよう。

これからの社会では、多くの商いは「教育産業」となる。
このことに、あなたはどういうイメージを持つだろうか?

たとえば酒屋さんがワイン教室を開き、ワインの価値を伝えるとともに、月謝をいただく。
そういうビジネスはイメージできるだろうか。

もちろんそういうケースもある。
しかしここで言いたいのは、もっと本質的で、もっとシンプルなことだ。
例えばワイン教室を開けるくらいの酒屋さんだとすれば、そもそもワインには詳しいし、それがどんな料理に合うかも分かるだろう。

さらに食べ物にも詳しければ、この時期は旬が何で、それを食べるならどのワインに合わせればいいか分かるだろう。
それを教え・伝えることを主とするというのが、ここでいう「教育産業」の本質だ。

その結果、旬の食べ物に合わせて毎月決まってワインを買う顧客が増えれば、それは月謝をいただくのと同じだ。
さらにその結果、毎月決まった額で旬の食材とワインをお届けするなら、さらに月謝っぽいことになる。

ワクワク系のあるクリーニング店。
同店店頭には、糀ドリンクや薬膳茶、様々な雑貨など、およそクリーニング店らしからぬものも多く並んでいる。

まずこの店では、店主は「クリーニングマスター」だ。
お客さんが同店にクリーニングに出そうと衣服を持って来ると、「これは家で洗える」と、その洗い方まで丁寧に教えて、返す。

預かった衣服にシミなどがあると、ときにそれを写真に撮り、クリーニングした後で、詳細な解説付きで返すこともある。
さらにときには「家庭洗濯教室」も開く。

店主はそもそも、専門的な技術教育を受けたクリーニング職人だ。
彼はその腕にかけて、「衣服をきれいにするとは」を教え・伝えているのだ。

そして糀ドリンクや薬膳茶だ。なぜそういうものがあるのかといえば、それは彼が教え・伝えたいことだからだ。
自身が若き頃に闘病し、腸内状態の重要さ、発酵食品の大切さを痛感したことがある。 その経験からお客さんに教え・伝えたいことがある。

最近では中医学も学び、自分がこれと思ったものの品ぞろえもしている。
彼にとって「きれいにするもの」は、衣服だけではないのだ。
そして信頼関係で結ばれた顧客は、その彼の声に耳を傾け、自分の生活に取り入れる。
この店で見られるような本質が「教育産業」なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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