【小阪裕司コラム第93話】書家と「生徒」と「お客さん」

【小阪裕司コラム第93話】書家と「生徒」と「お客さん」

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第93話】書家と「生徒」と「お客さん」

今日は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある書家の先生からのご報告を紹介しよう。

この先生、書家として様々な活動をなさっているが、そのひとつとして書道教室がある。
ワクワク系を学び、一番自分の意識が変わったのは、そこでの「生徒さん」が「お客さん」に変わったことだという。

「生徒さん」というのは、一度入会されるとずっと月謝を払い続けてくれる、今注目の言葉で言えばサブスクリプションモデルのありがたい「お客さん」であるとの捉え方が実感できてきたとのこと。

そんな彼女が最近実践したことがある。
教室の近くにお住いの方に向けて、短期書道教室のアプローチをしたことだ。

小学校の冬休みの宿題には書き初めが出ることが多いが、両親に書道の経験がないとフォローができない。そこでご近所の方のお役に立とうというものだ。

「実は結構思い切りが必要でした」と彼女が言うのは、その告知だ。
自宅の門に募集の看板を貼ったのだが、そういうことは今までやったことがない。

それでも思い切り、親近感がわくように小2のお孫さんに挿絵を描いてもらったり、QRコードを入れてより詳しい情報が見られるようにするなど工夫も加え行ったところ、結果は上々、予想以上の申し込みがあった。

さらにその生徒たちが書道教室に申し込むという流れもできた。今まで教室をビジネスとして見ていなかったので、今回のことで見方・考え方を変えられたと彼女は言う。

書家といえば「アーティスト」であり教室では「先生」であるゆえ、商売という感覚や、「生徒」を「お客さん」と捉える感覚は薄いかもしれない。

同じことは、他のアーティストやクラフト作家の方々、学校などの教育産業従事者、 医者などの医療従事者にもあるかもしれない。

彼らの現場では、「生徒さん」や「患者さん」と呼ばれているだろうが、彼らに価値あるサービスを提供し、対価をいただいていれば、それはサービス業であり、月謝をいただいていればサブスクリプションモデルだ。

ならば自分の営みを〝商い〟としてとらえ、いかに新規客を獲得するか、獲得したお客さんをいかに顧客に育てストックしていくか、さらにどんなサービスを提供すれば喜んでもらえ購入していただけるかを、日常的に考え、具現化していくといいだろう。

誰かにとって価値あるものを届けられる方々は、みな社会にとって貴重な商人なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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