【小阪裕司コラム第92話】10倍の誤発注が3時間で完売!?

【小阪裕司コラム第92話】10倍の誤発注が3時間で完売!?

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第92話】10倍の誤発注が3時間で完売!?

北海道で食品スーパーを営む、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員から、興味深い報告が届いた。

それは、誤発注で10倍入荷してしまったカステラを3時間で完売したというものだ。
彼はいったいどんな手を使ったのだろうか?事の発端はこうだ。

1ケース12個入りのカステラを3ケース発注したところ、発注時に「30ケース」と入力してしまったのだろう、入荷したのは30ケース、バックヤードには山積みのケースが。返品もできず、ワクワク系を学ぶ以前なら「どうしよう、どうやって処分しよう」と考えていただろうが、今の自分は違うと店主。

「さて、どうやってお客さんに『買う』と動いてもらうか」を考えた。 そこで使ったのはLINE。そして、フェイスブックにツイッターだ。 それらを通じて普段からつながっている顧客にメッセージを発信した。

その文章は、「お助けください」のタイトルから始まる、次のようなものだ。

「【お助けください】こんにちは、またやってしまいました…。『誤発注』…3ボールとしなければならなかったのに、30ボールと…。朝、来た荷物見て『え???こんなにたくさんどこに使うの???』って妻に聞くと、妻『………(汗)』」そこでお願いです。お助けください。商品は皆さんも知っている〇〇〇(商品名)です。1つでも助けてくれたら嬉しいです」。

ちなみに、このメッセージに価格も書かれているが、若干お得な価格にはしたものの、激安価格ではなく、しっかり利益も乗っている価格である。叩き売ったわけではない。しかしこれに顧客は反応した。

配信直後から購入客が続々来店、結果、30ケース、360個もの商品が、わずか3時間での完売となったのである。

この結果を生んだ要因は幾つかあるが、まず第1はダイレクトなアプローチだ。 大量に入荷した商品をただ店頭に並べただけではこの結果はない。

POP(店頭販促物)に「助けてください」と書けば、通常よりはよく売れるだろうが、3時間で完売は無理だっただろう。

LINEなどを通じて直接アプローチできたこと。これがポイントだ。次にメッセージだ。単に商品名と価格に「入荷しました」とメッセージを送っても、お客さんの心は動かない。

そして第3は、あなたにも考えてみてほしい。実は今回、買ってくれたお客さんは、口々にこう言っていた。

「助けに来てあげたよ~」。

この言動の中に、第3の、そして最も重要な目に見えない要因があるのだが、何だと思うだろうか?

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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