【メンテナンスショップレポート②】その方は本当にあなたの会社の顧客ですか?
カテゴリ:整備収益増大
【メンテナンスショップレポート②】その方は本当にあなたの会社の顧客ですか?
前回、今後の縮小市場の中で、我々整備業が生き残るための活路は顧客増大とLTVの最大化であると書いた。その明暗を分けるのは車販であり、整備工場にとって車販は、得意不得意や好む好まざるに関係なく、必ず取り組まなければならないものだ。その中で、何をおいてもまず初めにやるべきは「自社客の代替促進」である。コストをかけて新規客への車販に取り組む前に、車検や整備で長年付き合ってくれている顧客にこそ、自社で車を買い替えてもらいたい。
前回、「基盤代替率」の話をした。これは自社の基盤客の内、1年間で何%のお客様が自社にて代替をしていただいているかを示す数値で、「年間基盤客代替数÷総基盤数=基盤代替率」と算出することができる。一般的に7年代替が平均と考えれば、100%÷7=14.28…%が目指すべき基盤代替率となる。自社の基盤代替率は何%だろうか?この基盤代替率を高めるためには「自店で代替してくれない理由」に真摯に向き合うことが必要だ。
ある整備工場のお話。Sさんという顧客がいるとする。Sさんには、フリードを5年前から車検に入庫してもらっており、まもなく3回目の車検満了日を迎える。Sさんがこの車を購入したのは6年前だ。ネットで探していたクルマを郊外の中古車販売店で見つけ購入した。最初の車検はその販売店で受けたが、自宅から少し遠いこともあり、その後の2回の車検はこの整備工場に出している。半年ごとのオイル交換は、自宅から2KMの距離にある大手カー用品店だ。ちょっとした車内清掃のグッズを購入した際にオイル会員になったのがきっかけで、毎回このお店で済ませている。この用品店からは3ヶ月程前に車検の案内ハガキが届いた。
また、キレイ好きなSさんは、月1回必ず洗車をしているが、自宅からほど近いガソリンスタンドで行なうことが多い。先日の給油の際、仲良くなった給油スタッフから車検の見積もりの提案を受けた。車検ステッカーを見て声をかけられたようだ。
さて、このSさん、今回の車検をどうしたかというと…。新車のセレナを購入し、日産ディーラーの顧客となった。今のフリードが10万キロを超えたことに加え、3人目の子供が生まれ、今のフリードでは手狭に感じられてのことだった。購入したディーラーでは、メンテパックに入り、加入いただいていた自動車保険も切り替えたとのことで、この先しばらくの入庫は見込めそうにない。
これは例え話であるが、このSさんはどのお店の顧客だったのだろう。整備工場や用品店、ガソリンスタンドが、それぞれに自社の顧客と思ってアプローチしていても、流出するのは一瞬だ。それぞれの店舗が、「ウチでもクルマ買えるのに…」と嘆くが、その声は顧客には届かない。
整備業の車販は一足飛びにはいかない。車検から車検までの2年間、できる限り多くの接点を持ち、顧客のクルマの状態を把握しながら面倒を見るだけでなく、顧客のライフスタイルやライフステージの変化に耳を傾けることが必要だ。お客様が乗り替えを検討するタイミングは様々だが、車検に限らず、多頻度に接点を持ち、お客様が「乗り替えたい」と思うタイミングを逃さないことが重要なのだ。
この活動をやり続けられる整備工場こそ必ず成果を出せる。
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