【メンテナンスショップレポート③】車販は1日にしてならず
カテゴリ:整備収益増大
【メンテナンスショップレポート③】車販は1日にしてならず
今回は「どうして、うちのお客様はうちから車を買ってくれないのか?」という整備工場の経営者なら誰もが直面する素朴な疑問にお答えしたい。新車のリースや低金利ローン、中古車の共有在庫など、新たな車販施策を始めたのに、思うように売れない…という整備工場の悩みを聞くことがある。せっかく良い仕組みを取り入れ、強力な武器を手に入れたと思っても、肝心な商談が増えないというのだ。車販収益を増大するために、悩んだ末に思い切って投資を決めた経営者としては、やり切れない思いであろう。
前回もお伝えした通り、整備工場で車販を増やすには基盤代替の推進が必要であるが、そのために最も重要なのは、自社顧客の代替意向を発掘することだ。顧客と適切な頻度で接点を持ち、車検はもちろん点検やオイル交換などで入庫いただく際に、現在お乗りの車の状態に加え、顧客のライフスタイルの変化や趣向の変化をお聞きした上で、次回車検までの間の代替の意向を確認しなければならない。
以前、ある整備工場の社長に手帳を見せてもらったことがある。その黒革の手帳のスケジュール欄にはお客様の名前とメモがぎっしり書き込まれていた。「このお客様は?」とお聞きすると、「少しでも代替の意向があったお客様で、今月末までにフォローする予定のお客様」とのこと。毎月全部で30件位の名前が記入されおり、その中から月に10件位のお客様に代替いただけているようだ。社長にとってこの黒革の手帳は絶対に失くせない宝物だという。
また、以前に読んだ某ディーラーのトップセールスマンの著書にも同じようなことが書かれていた記憶がある。ツールは手帳ではないかもしれないが、デジタルでもアナログでも、やるべきことは一緒だ。
車販は一日にしてならず…。このような活動を「出来そうで、なかなか出来ないこと」と片付けるのは簡単だが、出来ている人だけが成果を出しているということを忘れてはいけない。そこに必勝法があるなら、どうやったら出来るのかを真剣に考えることも大切だ。
ある整備工場ではこんな取り組みをしている。オイル交換やタイヤ交換などの入庫の際、フロントスタッフが次の車検の予定をお聞きし、車検を通すか乗り替えるかが未定のお客様を「見込台帳」なるエクセルの見込管理シートに入力しておくという。合わせて「次に、いつ、どのようなアプローチをするか」を入力することが決めごとになっているそうだ。例えばこんな感じだ。「3月の車検の前に乗替検討/次回アプローチは11月/年末セールの下取支援企画(下取額アップの企画)をネタに電話する。」フロントスタッフは、入力の抜けを防ぐためとアプリローチの案を皆で考えるために、終礼時に社長や整備士たちに案件を共有し入力しているそうだ。この年末セールの下取支援企画も、案件への対策を考える中で、ある整備士の発案がそのままセール企画になったものだという。そして、基盤客が1500件のこの店舗の見込台帳は今では常に100件程度あり、毎月この中から10件程度の商談がコンスタントに発生し、半数以上が成約するとのことだ。
整備工場の車販に近道はない。どんなに有効な車販施策も、案件発掘なくては成果に繋げることはできない。地道な活動の積み重ねこそが車販増大に繋がるのである。
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