代替・車検を増やす「基盤買取アプローチ」

代替・車検を増やす「基盤買取アプローチ」

カテゴリ:経営コラム, 車販収益増大

代替・車検を増やす「基盤買取アプローチ」

新規顧客獲得が難しくなってきた昨今、自店の基盤客の流出防止こそ、自店の将来を守るための重要なテーマです。
その意味で、お客様の代替タイミングは「販売のチャンス」であり、一方で「流出の危機」ともいえます。この機会をキャッチできるかどうかが運命の分かれ道。多くの店舗がこのテーマで頭を悩ませているのではないでしょうか。

今回は、整備業のA社様で行っている「基盤買取アプローチ」という手法をご紹介させていただきます。

「車の販売もしているんですか?わかりました。検討しておきます。」 

A社様は、車検入庫案内の際に、同時に車の販売の案内もしているのですが、多くのお客様から耳にするこのような断り文句に悩まされていました。

「これからの整備業は、競争が激しくなっていくので販売も強化しないと顧客が減少してしまう」という危機感から、店前には10台程度の展示車を並べ、店内も新車のカタログや車販のPOPなどで演出を強化しました。しかし、それでもなかなか成果につながっていませんでした。

A社様は、車検や整備の評判は良いのですが、逆に「整備」という印象が強すぎるのか、いろいろ施策を講じても一向に車販事業の認知は広がりませんでした。

「車の買取始めました。」

そこで、A社様で取り組むことにしたのが、「基盤買取アプローチ」という方法です。
車検3ヵ月前のお客様を対象に、車の買取案内のDMを発送。車検予約促進コールを兼ねて、電話でDM送付先全数にアプローチしていくというものです。そして、このたった一枚のはがきが、期待以上の結果を生むことになりました。

反応①「乗り替えを検討しているんだけど、この車いくら位になるかな?」
反応②「新車を買おうと思うんだけど、他店の下取がしぶいんだよね。」

これまでは、お客様が乗り替えを考えたときに、このような話がA社様に来ることはほとんどなく、「検討しておきます。」という断り文句の連続。ましてやお客様の方から、乗り替えのお話で電話が来ることは皆無でした。

「売り込み」から「提案」に

しかし、買取の話ができるようになったとしても、他社で乗り替えられてしまったら意味がありません。販売ができなければ・・・。
ところが、ここでも「買取アプローチ」の効果が出ます。これまでは聞き出すことができなかった次の車のお話を、お客様の方から面白いように話していただけるようになったのです。

査定で来店されるお客様は、車を提案されるとは思っていません。そのため、次に買いたい希望の車種、予算、候補車両やその見積金額などを、世間話としてお話しいただくことができました。お客様の情報さえ掴めれば、ここからの提案は非常に楽になります。

「そうですか。新車でワゴンRを検討されているんですね。それはいいですね。実はうちでも新車を取り扱っているんです。一度お話しだけでも聞いてみませんか?」
「売り込み」から「提案」に変わった瞬間です。

思わぬ効果。車検予約増!

そして、この基盤買取アプローチでA社様は、もうひとつ、これまでない経験をすることになりました。

あるお客様から電話があり、こう言われました。
「そういえば僕の車を買い取りたいって案内来てたね。ごめんね。まだ乗り替えるつもりないんだ。でも、車検はお宅に入れるからよろしくね。」

こちらからお願いして車検を予約してもらったことはありますが、お客様に“謝られて”車検を予約してもらった経験は初めてでした。これまでは、「乗り替え」になるかどうか、ビクビクしながら車検予約の電話をしていたのに、買取アプローチは、断られれば車検予約になるのです。
電話を担当するスタッフも、前向きにコール活動に取り組むことができるようになり、乗り替え案件獲得と同時に、車検予約の増加にもつながりました。

基盤買取アプローチのポイント

①車を売却する店を決めているお客様は少ない

車を買うのはディーラー、整備は近くの整備工場、カー用品は量販店というように、お客様にはそれぞれの領域で利用するお店を決めている方が多くいらっしゃいます。ただ、「車を売却」する店を決めているお客様は少なく、いつも利用している店で下取に出す方がほとんどです。

②予想外のアプローチ

お客様は、「車を売ってくれませんか?」というアプローチをされた経験は、ほとんどないはずです。また、例えそのときには乗り替えの予定がなかったとしても、この経験は記憶として残り、乗り替えようと思った際に、「そういえば、私の車を買いたいと言っていた店舗があったなあ。」と思い出すのです。どんな商品もそうですが、「予想外」のアプローチはお客様の気を引く効果があります。

③警戒心を解く

基盤買取は、「車を買ってください」というアプローチではないので、お客様に費用負担がある話ではありません。それに、買取アプローチは「お客様の車には価値があるんです。」というお話の内容ですので、お客様は決して悪い気持ちはしないのです。

このように、基盤買取アプローチは、お客様の心理を踏まえた新たな乗り替え提案の方法といえます。
顧客の流出防止という重要な経営課題に対するひとつの考え方として、この「基盤買取アプローチ」をぜひお試しいただいてはいかがでしょうか。

チーフスーパーバイザー/チーフコンサルタント 大塚 隆博

チーフコンサルタント 大塚 隆博 Ohtsuka Takahiro

1989年に大手コンサルティング会社に入社後、様々な事業の立ち上げに加わり、自ら役員として会社経営した経験を持つ。自動車事業分野に転身後は、事業立ち上げのキャリアを活かし、主に新規事業の開業指導担当としてその実力を発揮してきた。冷静沈着で粘り強い指導スタイルは、クライアント企業オーナーからの評価も高い。各種ノウハウ開発のプロジェクトリーダーとしても活躍しており、随所に能力を発揮できるオールラウンダーである。

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