【小阪裕司コラム第117話】竿の作り方と魚の釣り方を知る
【小阪裕司コラム第117話】竿の作り方と魚の釣り方を知る
ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、都内で印刷会社を営む方から、示唆に富んだレポートをいただいた。いささか身内話めくが、ビジネスすべてに通ずるとても重要なことゆえ、今日はこのレポートを紹介したい。
それは、当会の説明会講演が先週終了したことをきっかけに、自分がその説明会で入会した頃を振り返っての話だった。
レポートには、まずはこうある。「2年前(入会当時)を思い出してみました。当時は『あんな山奥のスーパーでV字回復するなんて、なんか凄い手法があって、ワクワク系マーケティング実践会に参加すれば、それ(秘伝)を教えてもらえるのだろう!』と勝手に判断して即入会しました」。
しかし残念ながら当会は、知ればたちまち魔法のように業績が上がる「秘伝」を教えているわけではない。彼も、入会当初を振り返って言う。「それまでにも様々なセミナー等に参加した事がありますが、大体ワークがあってそれをこなしていって力がつくみたいなものが大半だったので、そのワーク自体が無かったので、少し面食らった感じでした」。
しかしそれから2年経ち、彼は今こう感じていると言う。「世間では、『困っている人には、魚ではなくそれを釣る竿を与えなさい』と言いますが、ワクワクでは竿は与えてもらえません。ワクワクで教えてもらえるのは『竿の作り方と魚の釣り方、そしてそれを試行錯誤している先輩たちのこれまでの実践成果と、その先輩たちと繋がる方法』なんだという事が腹落ちしました。竿を与えられても、その竿が壊れたり・盗まれたりしたらそれでおしまいです。でも、その作り方が身についていたら、何度でも作り直せますし、先輩の上手な作り方を真似できます。竿が壊れたり・盗まれたりしても何度でも作り直せます。そして釣る魚が変わっても対応が出来るのだと思います」。
この彼の気づきには、ワクワク系がどうとかを超えた重要なことがある。それはこの激動の、変化が速く激しく、先行き不透明で、予期せぬ“禍”すらある時代、ビジネスや仕事を続けていくためには何が不可欠か、ということだ。これからも、ときに竿は壊れ、魚は消えるだろう。しかし、自分の竿の作り方を身につけ、状況変化に対応できる感性を身につければ、それに備え、平時は豊かに、有事にはしなやかに強く、日々を営むことができていくのである。
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