【小阪裕司コラム第146話】「交流」と「相手を楽しませる楽しさ」
【小阪裕司コラム第146話】「交流」と「相手を楽しませる楽しさ」
少し時期的に遡るが、以前、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるキャンプ場から、ハロウィンに仮装イベントを行ったという報告をいただいた。年間様々なイベントを行う同キャンプ場だが、最初は「仮装してキャンプする人なんかいるのだろうか?」と半信半疑で始めたものの、最近はすっかり定着してきた人気イベントとのこと。
送っていただいた資料写真を見ると、想像以上に本格的な仮装だ。町を練り歩くわけでもないのでより凝った仮装ができるのか、ほとんど着ぐるみという恐竜の仮装をした家族もいる。データを見ると、今や参加者の半数がリピーター。このイベントの楽しさ、参加された方々の満足感を示していた。実際報告にもこうあった。「キャンプ人気も手伝って利用件数は年々増えていますが、とはいえ 10月下旬ともなると朝晩はかなり冷え込みますので、初心者の方は敬遠する時期です。また、普通は日にちが近づくに連れて徐々に予約が埋まっていくのに対して、この日だけは予約が埋まるスピードがとても早かったのです。これはおそらく、リピーターさんが『今年も行く!』と決めておられて、いち早く予約するという行動を取ってくれているのではないかと思われます」。その通りだろう。
さらに今回印象深かったのは、この日仮装と並行して、お客さんが自分のサイト(キャンプ場の敷地の中でテントを張る場所)で不要になった子ども服やおもちゃなどを販売する、フリーマーケットイベントを行っていたことだ。
これを、先の仮装と合わせて考えてみよう。仮装は、他の方の仮装も見て楽しみ、自分たちの仮装にも反応してもらえてこそ楽しいものだ。つまりその楽しさの核には「人との交流」があり、「相手を楽しませる楽しさ」がある。そこでさらにフリーマーケットだ。ここには、同じキャンプ場のしかも仮装イベントに来たというある種の仲間意識の中で、さらなる「交流」と「相手を楽しませる楽しさ」がある。報告書にも、「むしろ自分がイベントの一役を担っている、ちょっとだけ主催側に足を踏み入れている、自分の貢献が子どもたちを笑顔にしている、という事に喜びを感じてくれているのではないでしょうか」とあったが、まさにそれこそが、今日のお客さんにとっての「楽しさ」だ。これから季節は春。あなたのお店や会社でも、何か考えてみては?
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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