【チームエルのチーム作り第10回】部下が、あなたに一番聞いて欲しいことは?〜人材育成は「知る」ことから
カテゴリ:チームエルのチーム作り
【チームエルのチーム作り第10回】部下が、あなたに一番聞いて欲しいことは?〜人材育成は「知る」ことから
評価制度を元にした評価とその理由を、社員は前向きに受け止めていますか?
本コラムは、評価する側の会社幹部が少なからず抱いているお悩みに応える内容です。社員が会社側の期待を理解し、成長を続けるためには幹部と社員が信頼感を高めることが重要であり、その前段階として評価者が「部下を知る」ことが必要です。「知る」ための具体的な方法を、ぜひご参考に!
仕事を通して成長し、仕事が充実するように
「おー、よくやったねー。ありがとう!」
「すごいねっ、がんばったね!」
経営者なら、社員にこういう声を掛けたいですよね。
こちらも楽しくなります。
「この会社に入ったからここまで成長できました。ありがとうございます!」
「この会社に入って考え方が変わりました。仕事が充実しています!」
こんな声を社員の口から聞いたら・・・。
多かれ少なかれ「嬉しい!このために頑張っているんだなー」と思うことでしょう。
社員育成のカギは「知る」ことから
社員の成長は、経営者や上司など、育成に携わるすべての人の「充実」に直結します。
したがって、部下の育成が進めば進むほど、上司であるあなたの仕事も「充実」していくのです。
とはいえ、「それができなくて困っているんだよ・・・」という声も聞こえてきそうですね。
では、社員育成時に最初にすべきこととは何か?
それは、「部下を知る」ことです。
例えば、
・入社時はどのようなきっかけ、想いで来たのか?
・仕事をしていてやりがいを感じるのはどんな時?
・いま一番頑張っていて、上司に知って欲しい(褒めてほしい)のはどんなこと?
・この会社で3年後、どんなキャリアを積んでいたい?
まだまだたくさんありますが、部下のいまの価値観を形成している「経験」を知り、その価値観を理解したうえで成長課題を伝えてあげること。
そうすることで、「自分を理解してくれている上司が、自分のために成長課題を提示してくれているんだ。ありがたい。がんばらないと!」という気持ちになっていくのです。
そのための手法に、上司と部下がマンツーマンで実施する「フィードバック面談」という方法があります。
今回は、こちらについて具体的にお話ししてまいりましょう。
変容と成長を導く「フィードバック面談」
社員の考え方と行動を変化させ、成長に導くために重要になるのが上司から部下へマンツーマンで実施する「フィードバック面談」と呼ばれるものです。
これは、評価制度に基づいた評価の結果とその理由、これからの期待事項、もっと成長するための具体的な行動指針などを伝え、成長へのモチベーションを高めてもらうためのものです。
評価とともに「フィードバック」する
会社や上司の評価、その結果の伝え方は、評価される側の社員の人生に大きな影響を与えます。
上司からのフィードバック内容を聞きたい、と思ってもらうためには「部下の想いや考えを徹底的に聞き理解する」ことが重要です。
「できたこと」「できなかったこと」は何か
評価の内容を伝える前に、下記のようなことを部下に聞いてみるとよいでしょう。
・この評価期間で「頑張ったこと」「できたこと」は?
・この評価期間で「できなかったこと」は?
・会社や上司にどんなことを期待されていると思う?
・次の期の目標や実践したいと思っていることは?
特に、「会社や上司からの期待事項」については、部下にいろいろ質問することによって、部下自身が「何をしたいのか」だけでなく「会社の期待に応える必要がある」ということを自ら理解してくれるようになります。
期待事項に納得できれば、おのずと動く
フィードバック面談のゴールは、「評価される側が自身の評価内容に納得し、会社や上司からの今後の期待事項と評価点数を高めるための具体的行動を実践していきたい!と思うようになること」です。
「良いフィードバック面談」での重要ポイントとは
・部下の考えや自己評価の理由を否定せず、徹底的に聞く=「部下を理解する」
・部下の考えを理解した上で、評価内容とその理由、期待事項を伝え、今後の具体的な改善行動を一緒に考え、合意する
このような面談を繰り返すことにより、上司と部下の認識のGAPがなくなり、部下が成長意欲を高め、「より頑張りたい!」と思って行動することで、成果・成長につながっていきます。
これが、経営者や上司の重要な仕事であり、自身のやりがいと喜びにもつながるのです。
評価者は、部下に信頼されているか
今回は私が支援させていただいているクライアントで実際にあった、評価者の成長についてお話します。
そのクライアントは、島根県の自動車メーカー系ディーラーで、従業員40名ほどの会社です。
先代である父親から事業を引き継いで3年目となる社長は、今後生き残っていくために組織力強化が重要と考え、評価制度を導入する意思決定をされました。
キーマンは評価する側にあり
制度設計を進めて行く中で、評価者である幹部の方々が部下に対する関心が低く、信頼関係が希薄なことが明確になったため、評価者への訓練を通して改善することとしました。
組織再編に向け弊社から指導させていただくケースでは、評価者の訓練を特に重視しています。
部下に評価を受け入れてもらうためには、評価者が信頼を得ていなければならないからです。
訓練では、評価基準のすり合わせに始まり、部下一人ひとりに対してどのようなフィードバックをするのか、準備をしました。
これまでの経験、将来目指す姿、やりがいを感じる業務、苦手な業務など、部下のことをどれだけ知っているかを確認し、理解度に応じた面談の進め方を設計する必要があるからです。
準備の中で、「部下への理解が浅い」という認識をしていただき、まず徹底的に相手のことを知ることから始め、評価と課題の話をするということになりました。
信頼を得てこそ進む人材育成
ひと通り面談を実施後、以下のような手ごたえを感じていただけました。
・部下から「このような機会を待っていた」という声をもらった
・今まで知らなかったことを聞けた、部下からの要望を聞くことができた
・面談後から部下の行動に変化があった
いかがでしょうか。
人材育成でまずやるべきことは「部下を知る」ことだということがお分かりいただけたかと思います。
これから自社で人材育成に取り組む皆さまにとって、参考になれば幸いです。
代表取締役 堀越勝格 Horikoshi Katsunori
自動車販売等の経験を経て2002年大手経営コンサルタント会社入社後、カーディーラー、自動車整備業、中古車販売店等、業界企業の経営から現場改善までありとあらゆるテーマの実践的なコンサルティングを展開。 2006年からはカーリンクチェーンのSV(店舗指導部隊)を率い、店舗だけでなく、チェーン全体の生産性改善に向けた戦略的指導をも推進する。 自動車販売の人材育成・営業力強化は勿論、経営戦略の策定支援、製販の組織連携強化、組織活性化、人事評価システムの構築等、多岐に亘るテーマのコンサルティングを行い、クライアントオーナーの信頼に応え続けている。
取締役/シニアコンサルタント 岩根弘和 Iwane Hirokazu
大手経営コンサルティング会社入社後、自動車販売店の現場でマネジメント業務を経験。 その後、自動車FCチェーン本部立上げ、コンサルティング実務、部門マネージャー、事業部長に就く。 現在、経営コンサルティング部門の取締役事業部長。
チーフコンサルタント 矢澤 知哉 Yazawa Tomoya
大学卒業後、カナダ留学。現地での経験や友人の力になりたいという想いからコンサルタントを志し2019年に入社。 自動車販売直営店での実習、加盟開発営業やSV支援・経営コンサルティングのアシスタントを経て、コンサルタントとなる。 経営理念や評価制度策定、労働環境改善、採用をテーマとした支援に取組み、現在チーフコンサルタント。
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