【小阪裕司コラム第328話】お客さんが真に買っているものとは1

【小阪裕司コラム第328話】お客さんが真に買っているものとは1

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第328話】お客さんが真に買っているものとは1

 今回は、次回と2回に渡り、現代の商売におけるとても重要な本質に関わるお話をしたい。「お客さんが真に買っているものは何か?」という問いに関することだ。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、牡蠣養殖業を営む会社からのご報告。

 同社では、昨年から試験的に始めた新しいサービスがある。それは「牡蠣オーナー制度」というものだ。よくある「リンゴの木のオーナー制度」などに似たもので、ここでリンゴの木にあたるものは、垂下式牡蠣養殖で用いるホタテの貝殻だ。牡蠣の稚貝が付着しているホタテを「カルチ」と呼ぶが、1枚のカルチから、牡蠣は通常5~10個収穫できる。そのカルチ、10枚1口のオーナーになってもらうのだ。

 昨年のモニター運営がうまくいき、オーナーさんたちにも大変好評だったため、今年から本格運用を始めた。コースは4種類。一人でがっつり楽しみたい方向けの「プレミアムコース」や、家族でお子さんも一緒に参加できる「ファミリーコース」など、それぞれ自分に一番向いているコースに入会してもらう趣向にした。そして、メンバー募集に当たり今回、次の点を訴求した。収穫量が少なかった場合に収穫量の最低保証をすること。そして、SNSや募集チラシでは「最高で100個以上の収穫も狙えます!」「昨年のモニターさんは、一番多い人は130個以上収穫できました!」などとアピールした。

 すると思いがけない反応があった。結果的に今回32組が申し込んでくれたのだが、今回参加を見送った方の中に、「100個ももらっても困るので今回は見送った」「そんなに食べられないから100個もいらない」といった声が少なからずあったのだ。後で聞くと「参加したかったんだけど…牡蠣が100個以上も届くかもしれないので困るからやめておく」というのである。

 これには同社三代目も驚いた。彼の感覚から言えば、各コース料金と自社で売っている牡蠣の価格を考えれば、最低でも保証しなければならない収穫量はあり、さらに実はもっと収穫できることは一番のPRポイントだと思っていたからだ。

 そして今年のオーナー制度が始まると、さらに衝撃的な出来事があった。これら一連の出来事から、「お客さんが真に買っているものは何か?」の問いへの答えが浮き彫りになるのだが、その出来事とは何か?この続きは次回に。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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