【小阪裕司コラム第336話】お客さんを迷わせないことの効果とは

【小阪裕司コラム第336話】お客さんを迷わせないことの効果とは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第336話】お客さんを迷わせないことの効果とは

 今回は、お客さんを迷わせないことの効果のお話。その趣旨で売り場を改善したところ、売上が1.6倍になったというものだ。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある雑貨店からのご報告。

 その報告は、その雑貨店のタオル売場担当者からのもの。彼女の説明によると、今回の実践の背景と趣旨はこうだ。売り場には2種類の髪用タオルが陳列されているが、お客さんからの質問で最も多いのが「この2種類どっちも髪用だけど、どっちがいいの?」というもの。報告には売り場写真も添付されているが、たしかにそれぞれ「専髪タオル」「髪のためのタオル」と商品パッケージにも謳われはている。しかし、それだけではお客さんには「自分にはどちらがいいのか」は分からない。素材もコットンとマイクロファイバーの違いがあるが、それについても同様だ。

 この質問に対して彼女は言う。一般的には、それぞれの特性を伝えた後選んでもらうが、その説明に時間がかかる。さらに、自分が直接質問されれば詳しく伝えられアドバイスもできるが、毎回必ず対応できるとも限らない。そこで、お客さんのためにも、自分の不在時に対応するスタッフのためにも、「どっちがいいの?」に答えるPOP(店頭販促物)を作成し、掲示した。その結果、売上は160%、 販売個数は167%という結果になったのである。

 ここで重要な点は三つある。一つは、人は迷ったり、行動の仕方が分からないとき、すぐに行動が止まる性質があるということだ。その際、「どっちがいいの?」などと質問してくれる人はわずかで、多くの人はそのまま売り場から去ってしまい、「売れない」という結果を生んでしまう。

 二つには、彼女の狙いでもある「対面接客なしでお客様の疑問を解消し、お客様からの声掛けなしで情報を提供でき、一段階購入のハードルを下げられる」こと。彼女はそれが、「スタッフの接客拘束時間の短縮」にもなると言う。接客をなくしたいのではなく、聞かれたスタッフが分からない場合調べる必要があり、その時間をカットできるということだが、それはお客さんにとってもありがたいことだ。

 そして三つめは、そもそもお客さんは「説明を聞き、自分の好みで選びたい」と思っているわけではないことだ。お客さんは常に「自分に最適なものを教えてほしい」と思っている。お客さんは、本当はいつも、「迷いたくない」のである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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