【小阪裕司コラム第348話】「売りたいもの」を売るためには1
【小阪裕司コラム第348話】「売りたいもの」を売るためには1

今回は、ある生花店でのお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からのご報告。同店のような個人店にはハードルの高い高価な商品を仕入れたが、無事完売できたというお話だ。そのカギはお客さんに発信した情報にある。その情報とは。
同店はよくある〝町の花屋さん〟。時は12月、仕入れたものは鉢植えのシクラメンだが、ピンクや赤、白といった一般的な色と違い、深い紫色のもの。希少なだけに仕入れ値も一般的なものの2~3倍ほどになる。店主いわく、こういう商品を仕入れるのは主に大量仕入れが可能な大手生花店で、自店のような個人店ではなかなかハードルが高い。しかし、この美しさを自店のお客さんとも共有したいと仕入れに踏み切った。
そこで考えたのは、その価値をどう伝えるかだ。この花自体が際立って美しく、深紫色のシクラメンも珍しい。ならば置いておけば売れるかというと、お値段も大きな鉢では1万円近いもの。それでは売れないだろうことも、ワクワク系商人として分かっている。決め手は「どう価値を伝えるか」だ。
そこで、POP(店頭販促物)にうんちくをしっかり書く事にした。どこの誰が作ったものか、どれだけ生産技術が高い生産者か、この品種はその名産者が手掛けたオリジナル品種で、抜群の品質と美しさを誇るものであることなどだ。

さらに彼はもう1枚POPを用意した。こちらに書いたことはうんちくではなく、次のことだ。「花の仕事に携わり20年以上、数々の花を仕入れましたが、これほどまでにうっとりとほれ込んでしまうことはなかなかございません。ぜひこの冬は麗しい深紫のシクラメンとお過ごしくださいませ」。さらにこんな言葉も書き添えた。「底面給水方式を採用している為、水やりの失敗がありません」「上手に管理していただきますと、春までお花を咲かせます。(私のものは4月まで咲いていました)」
2枚目のPOPは商品の説明ではなく、言ってみれば店主の〝主観〟だ。店主が「うっとりとほれ込んだ」ものとぜひ一緒に過ごしてほしい(=だから買ってほしい)というものだが、ほどなく完売できたことから、この〝主張〟が受け入れられたことが分かる。
この成果のカギはまず「情報」だ。どんな情報を発信すればお客さんの心が動くのかがポイントなのだが、その成果を最大化する重要なポイントがもう一つある。それは何か。この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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