【小阪裕司コラム第347話】お客さんは知らないだけかも
【小阪裕司コラム第347話】お客さんは知らないだけかも

今日は自分たちが「当然、お客さんは知っている」と思うようなことも、実は伝わっていない、お客さんは知らないままかもしれないというお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、不動産店からのご報告だ。
同社は不動産業だが、建築(新築、リフォーム)も行っている。そのことをお客さんへ改めてアピールしようと、店舗内の壁面、不動産店の店内でよく見かける、物件情報がストックされている棚の上部、目につくところに大きく、自社が建てた住宅の写真を簡単な説明付きで掲示していた。
そうしてしばらくのこと、今回報告をいただいた同社スタッフいわく、「営業部から衝撃のコメントがありました」。それはお客さんから頻繁にこう聞かれるようになったことだ。「ところで、これはどこの会社で工事した物件ですか?」。
そこで気づいたことは、お客さんには「不動産業=建築工事」のイメージがまったく無いこと。ゆえに、自社で工事した事例写真を大きく掲示してあるにも関わらず、それをお客さんは、どこか別の会社の施工事例と受け取ってしまうという事実だった。

せっかくのアピールもこれでは効果半減してしまうと思った彼女らは、掲示されている施工事例写真に大きく「○○(自社の社名)で建てました(リフォームしました)」と書いたPOP(店頭掲示物)を加えた。さらに、「NEW!」と大きく書いた日付入りのPOPも合わせて掲示し、活気づいたイメージを与えるよう工夫した。
また、店内の席についたお客さんにもアプローチすべく、冊子タイプの施工事例集をおしゃれな写真集の風情で作成し、テーブル上に設置した。これは新規客へのアピールだけでなく、打ち合せ中のお客さんへの資料としても有効だったとのこと。実例写真は実際の暮らしをイメージがしやすいことから、デザイン面や造作工事、設備オプションなどで追加の注文にもつながっており、客単価アップにもつながっているという。
自分たちが「お客さんは知っている」と思い込んでいたことが、実はまったく知られていなかったという例は多い。まずは「知っている」との思い込みを見直して、改めてアピールすることをお薦めしたい。「売れない」のはお客さんが「知らない」だけかもしれないのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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