【小阪裕司コラム第120話】墓じまいの客がお墓を買うとき1
【小阪裕司コラム第120話】墓じまいの客がお墓を買うとき1
先日、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の墓石店の方から、驚くべきご報告をいただいた。墓じまいの相談があったお客さんが、結果として、300万円を超える予算で新しいお墓を建てることになったというものだ。この経緯からは、商売というものの本質が分かる。そして、時代の流れ、社会の変化に翻弄されない商売のスタンスも。2回に分けてこの学びを共有していこう。
それは、同店のホームページを経由した、1通の問い合わせメールから始まった。同社のある県内のお寺に先祖代々のお墓があるのだが、このたび同地にお一人でお住まいだったお母さまが亡くなられ、地元には誰もいなくなった。相談者は遠方にお住いの親族だが、そうなると、お墓をお参りするのも一苦労。この機会に墓じまいし、お寺とも離檀したいとのことだった。
そこで同店主、まずはお寺名とお墓の場所を聞き、現場確認しておいた上で、親族の方が実家の整理にこちらに来られるときに来店してもらい、話し合いの機会を持つことにした。ちなみに、なぜ墓じまいの作業だけをさっさと受けないのかは、同店のポリシーによる。同店では墓じまいの場合も依頼人本人たちからしっかりヒアリングし、プロとして状況を判断、お墓を残す可能性も含め、様々な方法を検討し、納得のいく結果になってもらうことを決めている。
そうしてその機会が来ると、店主らは、自分たちのお墓への思いや、実際に墓じまいに関わった経験から思う問題点を伝えた。問題点とは例えば、「こちらの親戚・友人との縁が薄れてしまうこと」や、「お子様、お孫様たちの田舎(両親・祖父母の故郷)がなくなってしまうこと」などだ。それらの話を通じて、お墓を残す意義や必要性を説いた。
また、残す方法も幾つか提案した。例えば、「お墓参りに来られないときは、こちらの親戚や知り合いにお願いできないか」「当人たちが元気な間だけでも残せないか」など。併せて、同社が提供している墓参り代行などのサポートメニューも説明した。そうして、1年、2年かかってもいいので、
依頼人のお子さん(二人の娘さん)や、そのお婿さんらも交え、ゆっくりと時間をかけて納得いくまで話し合うことが必要であり大切だと力説、
質問や相談があれば、メールや電話、オンラインミーティングでサポートすることも伝えた。するとこの話は、ここから、店主が思ってもみなかった展開を見せる。続きは次回に。
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