【小阪裕司コラム第18話】「あの、おむすびあります(1)」

【小阪裕司コラム第18話】「あの、おむすびあります(1)」

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第18話】「あの、おむすびあります(1)」

ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)の会員であるおむすび屋さんから、なかなかに大胆かつ、ワクワク系的には緻密な実践のご報告をいただいた。

このおむすび屋さんは、幾つもの建物が並ぶ大きな商業施設の一角を占めるレストラン棟の中にお店を構えている。

そこはいわゆるフードコートになっているため、彼の課題は常に、この商業施設を訪れたお客さんたちにいかにフードコートに立ち寄ってもらい、さらに自店を利用してもらうかということになる。

そこで彼が行ったことのひとつは、フードコートの案内ボードの見直しだった。
彼はボード内の自店のスペースにこう書いて貼った。

「あの、おむすびあります」

こうした案内ボードでは、ほとんどの飲食店は、自店が出している料理の写真を出す。
実際の案内ボードでも、他店は料理の写真ばかりだ。しかし彼の店だけが、赤い下地に文字だけで「あの、おむすびあります」。

さらに彼は、駐車場から見えやすい位置の壁に大きく自店を表示したが、そこにも赤地に文字だけで「あの、おむすびあります」。そんなことで売上が上がるのかと思うかもしれないが、果たして結果は、前年比150%~200%の売上で推移しているとのことである。

当コラムを、前身の日経MJ紙での連載の頃からお読みの方は、「あの、おむすびあります」と聞いて、ああ、あの事例の応用か、とピンとくることだろう。

もうずいぶん前になるが、当実践会の会員のある過疎地の食品スーパーが、当時全国で売っていたナショナルブランドのプリンを、最高で月に1500個、通年で1万個以上売った(この年、日本で一番売った店になったと噂されていた)事例だ。

この実践の決め手のひとつが、売り場でのPOPなどに書かれた一言、「あのプリンあります」だった。この事例以来、「あのおむすびあります」のフレーズは当実践会や私の講演を聴いた方々のなかで流行っているが、今回の取り組みはその応用のひとつだ。

しかし気をつけてほしい。この「あの、〇〇あります」は、単にそう書けばたちまち売上が上がったり、店の売上が倍になったりする魔法ではない。先ほど冒頭で「大胆かつ緻密」と言ったが、元ネタの食品スーパーも実は緻密。今回のおむすび屋さんも然りである。

それはどういうことか。この続きは次回に。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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