【小阪裕司コラム第183話】リピーターが増え続けるドライブインとは1
【小阪裕司コラム第183話】リピーターが増え続けるドライブインとは1
今回は、鮎の塩焼きが名物の、あるドライブインでの、リピーターを増やす取り組みのお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員からのご報告だ。
ドライブインという業種柄リピーターが少なくなりがちであることは、利用したことがある方ならピンとくるところだろう。実際私もドライブインを利用するのはどこかにレジャーで行ったときであり、その後再びそこを訪れることはまずないし、思い出すこともない。しかし、ワクワク系では常に、どんな業種でも、リピーターを増やすことに力を注ぐ。それが商売の基盤だからだ。
同店でも昨年初めに当会に入会して以来、そのための取り組みを様々に進めてきたが、最近ではリピーターが順調に増えてきているとのこと。
その取り組みのひとつが、初回来店された方にお礼のハガキを送るものだ。業種がドライブインであるだけに、送る枚数も多い。昨年3月から今年の8月までに送ったハガキは実に2638通。1通あたりのコストを考えると経費的にも無視できない数字だ。しかし、と店主は言う。この2638通の中で一番多かった声は、「ハガキが届いたからまた来たよ」なのだと。このハガキこそが、着実にリピーターを育てる手立てとなっているのである。
店主自身も、最初は謎に感じた言葉だった。そんなことが来店動機になるのだろうか?そもそも、自分が他店でお客さんの立場のとき、そんな気持ちになったことがあっただろうか?
そう思って振り返ってみると、そもそもハガキが届くようなことがほとんどないことに気づいた。あるいは届く場合もセールなどの売り込みが多く、同店のように「お礼」ではない。 また前提として、ハガキを送ろうと思えば、住所などの個人情報をいただく必要がある。同店では今年1500名の顧客リストを新たに作ることを目標に掲げていたそうだが、これも9月には達成した。それだけまめに個人情報をいただく努力を重ねているのだが、そういう店がどれだけあるだろうか。
さらにその前提として、お客さんが自分の住所などをその店に残そうとする動機が必要だ。かみ砕いて言えば、個人情報を残してもいいという気持ちになる店である必要があるが、同店では、例えば来店客に大好評の「ワンチャンシール」など、お客さんの心をくすぐる様々なアプローチがある。それらはどんなものなのか。この続きは次回に。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
おすすめの関連記事
-
【小阪裕司コラム第182話】未来へお店を遺すためにできること2
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ前回、あるバーでの、未来を見据えた果敢な実践の話をした。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のバーが行った本格パールアクセサリーの展示即...
-
【小阪裕司コラム第181話】未来へお店を遺すためにできること1
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ今回は、あるバーでの、未来を見据えた果敢な実践のお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の取り組みだ。 同店では、ワクワク系の実践をし...
-
【小阪裕司コラム第180話】ささやかながら強力な絆作りには
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ今回は、ある美容院と化粧品店での、ささやかながら強力な絆作り活動のお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の取り組みだ。 まずは美容院...
-
【小阪裕司コラム第179話】本格染物がよく売れる薬局とは
カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ今回は、ある薬局で、270年続く染物屋さんの本格染物がとてもよく売れたお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の薬局での取り組みだ。 ...