【小阪裕司コラム第213話】現場に山のように

【小阪裕司コラム第213話】現場に山のように

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第213話】現場に山のように

前回、前々回と、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のお店や会社での、ささやかな改善が大きな成果を生んだ例をお伝えした。そこでさらにもう1つ、こんな改善の話をしよう。ある飲食店での実践だ。

この店では毎月、日々様々なイベントや講座を開催しており、特別なランチの日もある。数が多いことから、毎月顧客に送っているニューズレター(以下、NL)では、表紙ページに何月何日に何があるかを列記していたが、店主は、ある月からこの告知を、1か月分のカレンダー形式で行うことにした。それは文字通り、NLの1ページを次の月のカレンダーに割き、各々の日付のところに同店で開催されるイベントや教室のスケジュールを入れる形式だ。

こう変えたところ、早速お客さんから反応があった。「いつ何があるのかが見やすくなった」という多くの声に加え、「表の中に営業時間があるといいのではないか」というような助言もいただいた。冷蔵庫に貼ってもらい忘れず見てもらおうと、カレンダーのなかに「見やすいように冷蔵庫に貼ってネ!」と書いたが、それも多くのお客さんが実行してくれた。

そこで次の月は、早速幾つかの助言も取り入れ、定休日や臨時休業日も入れ、土日祝日は色を変え、さらなる改善版のカレンダーにしてみた。するとさらにお客さんは反応した。多くの好評の声の他、しばらくお店から遠ざかっていたお客さんのランチの予約が入るなどがあった。

このお客さんに聞いてみると、やはりカレンダーを見ての予約だった。また、「予定表にある○○の後の予約はできますか?」など、明らかにカレンダーを見ての予約も増えた。店主は、以前の、表紙に月日時間とイベントなどを列記した告知はおよそ告知になっていなかったと振り返る。

情報発信する側としては、表紙に列記してあるのだから読まれていると思い込みがちだし、それでもイベントや講座、ランチなどの予約や問い合わせが少ないと、その内容や価格に問題があるのでは?となりがちだが、問題は案外そこではなく、今回のような「見せ方」(専門的には“情報デザイン”という)や「冷蔵庫に貼ってネ!」などの「行動のガイド」にあったりするものだ。

ワクワク系では常に「人」を見る。すると、こういう改善点は現場に山のように見つかる。それはある意味、宝の山なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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