【小阪裕司コラム第227話】お客さんを巻き込んで遊ぶ3

【小阪裕司コラム第227話】お客さんを巻き込んで遊ぶ3

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第227話】お客さんを巻き込んで遊ぶ3

これまで2回に渡って、機器のメンテナンスや小型車両の講習会などのイベントをスタンプラリーにして、お客さんと共に遊ぶ試みがヒットした例をご紹介した。では、こういった取り組みが、商売に何をもたらすのだろうか?

 次の例はその答えを表している。ある年、スタンプあと1つで5会場達成だったお客さんにスタッフが「あとひとつで帽子がもらえるし、次の展示会場は車で1時間くらいで来られるからどうですか?」と言ったところ、彼は翌週その会場に現れた。そして、受付に来るやいなや「あとひとつと言うから、頑張って来たぞ!」と猛アピール。そんな彼と展示会場を歩いていたところ、突然「この重機いくらだ?」とバックホーについてお尋ねに。数百万もする買い物だが、そのままとんとん拍子に話は進み、その場でお買い上げ。「おいー、帽子もらいに来たのに、バックホー買っちまったじゃねーか」と、帰り際本人は上機嫌だったという。

 元々今回のスタンプラリー企画は、同社イベントや講習会に繰り返し来てくれるお客さんへのお礼であり、よりその数を増やし接触回数も増やそうとの狙いだったが、それが果たされると同時に、お客さんとの関係性がどんどん深まっていると同社スタッフは語る。先のバックホーのようなケースは、それゆえ、急に思い立った時にもすぐ行動してもらえるようになったのだと彼らは分析する。

また、このイベントが回を重ねるなか、スタンプラリー達成者はちょっとした有名人になってきたという。そして彼らが会場で同社スタッフらと和気あいあいと話したり、「○○さん!いつもありがとうございます!」と声をかけられる姿を見て、他のお客さんらが、自分たちもああなりたい、こんな風に声をかけてもらいたいと動機づけられているとのこと。

 繰り返すが、これはアイドルのイベントではない。機器のメンテナンスや小型車両の講習会などであり、主な対象はいわゆる“おじさん”だ。しかし、人はこうなるものなのである。

以上、3回に渡って、ずいぶん前に日経MJに掲載した事例を再掲した。こうして見ると、改めて「お客さんを巻き込んで遊ぶ」ことが、どんなビジネス分野でも、たとえ主な顧客層が遊んでくれそうに思えない方々でも、実はそんなことはないことが分かる。それが結果的に、商売に利益をもたらすことも。しかし一方で今日、このような「遊び」のある店は減っている。

「遊び」のある店になろう。なにせ人間は「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」。お客さんはきっとそれを待っている。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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