【小阪裕司コラム第231話】価値を伝えることで商売は

【小阪裕司コラム第231話】価値を伝えることで商売は

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第231話】価値を伝えることで商売は

ここ数回に渡り、お客さんに価値を伝える意義と効果をお伝えして来た。ではそれが、「これまで長年売って来たものの、ほとんど売れない商品」の場合はどうだろう。今回はそういう話だ。

報告いただいたのは、ある地方の小さな町にある食品スーパー。同店ではこれまで長年に渡りワインを販売してきた。ただ、あれこれ考え品ぞろえを増やしてもほとんど売れず、ここ3カ月の販売実績も5本だけ。商圏が高齢者の多い過疎の町であることもあり、店主は、この地域の人はワインを飲む習慣がないんだなと考えていた。

また彼自身、ワインに慣れ親しんでいないという事情もあった。飲めないわけではないがよく分からない。分からないから飲まないということで、店での販売にも力が入らなかった。

そんなある日、地元で友人たちとの飲み会があった。その際、乾杯用に出たワインが実に飲みやすく、友人らとも、「ワインはよく分からんが、これは飲みやすい!」と何本もあけた。飲み会の席での偶然ではあるが、おいしい、また飲みたいと思うワインに出合った彼はこう思った。今までワインを飲もうと思わなかったのは、ワイン初心者である自分に合ったワインに出合わなかったことと、それでも特段困りはしなかったからだが、それはお客さんも同じなのではないか。ワイン初心者である自分は詳しい方のようには語れないが、「初心者はこれを飲んでみて!」「初心者の自分がはまっている」というメッセージなら発信できる。

そこで早速このワインを仕入れ、チラシとPOP(店頭販促物)で「ワイン初心者が飲むべきワインはこれ!」という内容の情報を発信したところ大人気。これまで3カ月で5本しか売れなかった同店で、たった1銘柄で、1カ月に30本以上が売れた。その後も、「飲みやすくて気に入った」「友達にも教えてあげたいのでプレゼントに」とリピーターが増え、すっかり売れ筋商品となったのだった。

実はこの実践報告は10年ほど前にいただいたもので、当時の連載コラムで紹介もした。そして今、同店のワイン売り場は大きなスペースになり、1万円以上する高級ワインも普通に置かれるようになった。それは客層が変わったのでなく、この実践をきっかけに、地域にワインファンが増えたことによる。

「価値を伝える」とは単にその商品が売れるだけでなく、その商品を持続的に購入する「顧客を創る」ことにもなる。今回の例のように、それがずっと売れなかったものでも、だ。商売とは常に「価値を伝える」ことで成り立っていくのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

おすすめの関連記事

【小阪裕司コラム第230話】売上を創れる人になるには

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

前回、前々回と、売れない商品を「売れる」に変えたり、意識されていなかった価値ある行いがお客さんに評価されるようになった例と共に「価値を伝える」話をした。これらの活動は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えし...

【小阪裕司コラム第229話】その価値は伝わっているか

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

前回、売れない商品を「売れる」に変えるお話をした。あの実践事例は、言い換えれば、一見価値の無さそうな商品(それゆえ、一般的には「はじき」と呼ばれる自家消費になる)の持つ価値を見つけ出し的確に伝えた話だが、実は巷には、そも...

【小阪裕司コラム第228話】売れない商品を「売れる」に変えるには

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

今回は、売れない商品を「売れる」に変えるお話。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある直販農家からのご報告だ。  この農家ではズッキ...

【小阪裕司コラム第227話】お客さんを巻き込んで遊ぶ3

カテゴリ : 小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

これまで2回に渡って、機器のメンテナンスや小型車両の講習会などのイベントをスタンプラリーにして、お客さんと共に遊ぶ試みがヒットした例をご紹介した。では、こういった取り組みが、商売に何をもたらすのだろうか?  次の例はその...

会員制サービス
「CaSS
(Car-business Support Service/キャス)」
に関するお問い合わせ

お申し込み方法やサービス内容、その他ご不明な点などがございましたら、
お気軽にお問い合せください!

  • 03-5201-8080
  • お問い合わせフォーム