【小阪裕司コラム第300話】「価値を伝える」ためにやるべきこととは

【小阪裕司コラム第300話】「価値を伝える」ためにやるべきこととは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第300話】「価値を伝える」ためにやるべきこととは

 ワクワク系マーケティングでは「価値を伝える」ことをずっと重視してきた。われわれがよく使う言葉にも「価値創造」「共鳴価値」といったものが多い。ただそのような話をすると、「わが社が、『新たな価値』を創れるだろうか?」と問われることもある。そこで今日はシンプルな話をしよう。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある飲食店からのご報告だ。

 その店では、以前から店内の通路を広めに取り、バリアフリーになっていた。常時車いすも用意してあるのだが、店内にあると邪魔でもあり、店の奥にしまい込んでいた。一方で「もったいないな」とも感じていたが、そのままにしていた。

 そんなあるとき、ワクワク系の他店の事例に「店の入り口を工夫してみた」というものが幾つかあり、店主ははたと気がついた。車いすも、「邪魔だな」「もったいないな」と思うのであれば、奥にしまい込まず、入り口に置いてはどうか。そこで車いすをたたんで入り口に置き、「貸出用車いす どうぞご自由にお使いください。店内はバリアフリーになっております」と掲示した。

 すると早速お客さまアンケートに嬉しい言葉が入った。「店内が広くてとてもきれい。あと、足の悪い母にとって車イスが置いてあるのはとてもありがたいです。今度連れて来ます」。

 今回のことを通じて店主は、自分では当たり前すぎて気がついていないが、実は価値があるものを案外見落としているのでは?しまい込んでいるのでは?と思うようになったと言う。これまでお客さんのことを思い、行ってきたこと、用意してきたものは他にも多くある。まずはそれらを伝える・表現することが自社の課題だと。

 これは「価値を伝える」好例だ。そしてこの例は、まずは自社・自店がすでに行っていることをよく見て再発見し、伝え始めればよいことを示している。その対象は商品に限らず、今回のようなものもあるだろう。それらがお客さんのことを思ってのことであれば、すべて「価値を伝える」対象となる。

 たとえ今業績が悪くても、価値あるものはすでに多くの会社・お店が持っている。それに気づき、伝え・表現することによって、「利用」「購入」といった行動が生まれ、ファンが生まれていく。それができてくると、「新たな価値創り」も自然と進む。価値創造活動とは、そういうものなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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