【小阪裕司コラム第301話】それこそが「商売」

【小阪裕司コラム第301話】それこそが「商売」

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第301話】それこそが「商売」

 このコラムの前身は、日本経済新聞社発行の新聞『日経MJ(マーケティングジャーナル)』に長期連載していた『招客招福の法則』という私のコラムだ。2003年7月から連載が始まり、足かけ14年、第554回まで同紙面で連載を続けさせていただいた。それを引き継ぐ形で続けてきたのがこのコラムとなる。

 その日経MJでの初期の原稿で最も反響があったもので、現在も話題となるのは、「サンマの話」だ。それは2種類のサンマの価値の伝え方についての話で、ある食品スーパーでの私と店主の会話だ。店主は、「うちの店は安いものしか売れない」と言い、その証拠として売り場にあった2種のサンマを指し示した。1匹130円と150円のものだ。たしかに高い方は売れ残っていたが、こんなときいつも私が疑問に思うのは「高いサンマが高い理由」だ。それが書いていなければ、買う側は「高い理由」が分からない。分からなければ、あえて高い方を買うことはない。人は理由のない行動をしない生き物だからだ。

 この事例では、その後「高いサンマが高い理由」をPOP(店頭掲示物)に書いて掲示したところ、高い方のサンマが売れ筋になり、さらにそのコラムを読んだ方が同じことを自店で行ってみたところ、やはり同じ結果となり、そのことも後日コラムで紹介した。

 このコラムではしばしばこのような「価値創造活動」の事例を取り上げてきた。それがこのサンマのように、しばしばPOPやダイレクトメールなどの具体的な販促物を伴うため、こういう取り組みは「販促物の作り方」に矮小化されてもきたが、最も伝えたいことは、価値が伝わらないまま「売れない」とされている商品やサービスが巷には多くあるという事実だ。そして多くの場合、そのことに気づかれず、別の理由(先のスーパーもそうだった)で片づけられていて、その結果、素晴らしい商品やサービスが世の中から消え、それによって救われたり、楽しい思いができたはずのお客さんがそうした商品やサービスに出会えなくなる、双方にとって大変不幸な事実なのである。

 人を幸せにできる「よきもの」を、それを待つ人に出会い届ける。するとそこに双方の喜びが生まれ、感謝を伴った対価が払われる。その対価がまたその行為を続けていく原資となる。これまでもこれからも、それこそが「商売」ではないだろうか。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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