【小阪裕司コラム第313話】「価値」が伝わったとき、お客さんに起こること2

【小阪裕司コラム第313話】「価値」が伝わったとき、お客さんに起こること2

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第313話】「価値」が伝わったとき、お客さんに起こること2

 今回は前回の続き。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のある呉服店が行った結城紬の展示会。そこで「価値を伝える」ことを徹底的に行った結果、売上も含め良い結果となったことをお伝えしたが、さらに意外な反応もあった。

 それは、購入したお客さんから「職人さんの想いがこもったこの着物は絶対に着たい」「私が買ったら職人さんにも利益をたくさん還元してあげてください」といった声が上がったことだ。展示会担当者いわく、「今回は『今までたくさんの作品を作り続けてきた職人さんに恩返しをしたい』をテーマにした」。

 それにより例えば、これまではお客さんが着物を選ぶとすぐにクロージングに入り値段提示していたところ、今回は、職人の仕事がいかに大変か、作品に込めた想いなどを伝え、価値をより上げてから値段提示を行ったという。他にも、「職人さんにどんな方の手に渡ったかお伝えしたいので」と、購入者の写真を撮らせてもらうなど、これまでとは異なる工夫を幾つも行った。

 そうした営みの結果生まれて来るのが先ほどの声に象徴される、お客さんの意識の変化だ。「利益をたくさん還元してあげて」との声は、いつもは価格のことばかり聞いてくるお客さんからだそうだが、この意識の変化が着目点だ。今回のように、商品の説明以上に、文化的背景、歴史、作られている環境、職人の高い技術や制作の苦労などを伝えることで、目の前の結城紬はお客さんにとってモノとしての「呉服」以上のものになる。さらにそこに、「国の重要無形文化財」「ユネスコ無形文化遺産」の話なども加わると、お客さんの心の中には、自分が買うことで文化を支えるような気持ちも芽生えてくるのである。

 ゆえに今回の場合、商品価値をいかに伝えるかというそもそもの課題と共に、「職人への恩返し」をテーマとしたことが功を奏した。商品そのものの価値のみならず、それを核とした価値全体を伝え切れたことで、お客さんの意識に変化を起こすことができたのである。

 また、このような消費はこれからの社会でますます盛んになっていくだろう。「買う」ことで社会にとって意義ある活動に参加していくような性質を持った消費だ。その機会を提示し、導いていくのもまた、この時代の商人の仕事なのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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