【小阪裕司コラム第329話】お客さんが真に買っているものとは2

【小阪裕司コラム第329話】お客さんが真に買っているものとは2

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第329話】お客さんが真に買っているものとは2

 今回は、前回の続き。現代の商売におけるとても重要な本質に関わること、「お客さんが真に買っているものは何か?」についてだ。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、牡蠣養殖業を営む会社でのこと。

 前回、同社が今年本格的に牡蠣オーナー制度の募集を行ったとき、「最高で100個以上の収穫も狙えます!」と訴求したが、それが逆効果だった話をした。同社三代目は、その反応に驚いた。なぜならお客さんらは、「牡蠣オーナー制度には参加したかった」、しかし「牡蠣はそんなにいらない」と言ったのだ。普段牡蠣の収穫量の増大を図り、卸先との商談においては常に価格が的となる(つまり、相手はできるだけ安い価格で多くの量を得ようとする)ことが日常になっている自分たちにとっては思いもよらないこと。ではお客さんらは何に魅力を感じて「牡蠣オーナー制度に参加したい」と思ったのか。

 そして本年度の牡蠣オーナー制度が始まると、さらに驚くことがあった。家族4人でファミリーコースに入会したお客さん。入会前から、ギフトでもよく牡蠣を購入してくれていた方だ。そのご家族が1回目のカルチをイカダに吊り下げるイベントに来たときのこと、家族揃って大いに楽しみ、「楽しかったです!」「また次回も楽しみです!」と盛り上がっていたそのご家族のお父さんが「今ここで牡蠣を食べたいんですが、買えますか?」と尋ねるので、三代目は「もちろんです。お幾つですか?」と返すと、返って来た言葉は「じゃあ、2つ」。

 家族4人で来ているのに2つ?と疑問に思い訊くと、衝撃的な言葉が返って来た。「僕以外、家族は牡蠣を食べられないんです」。これを聞いて三代目は考え込んだ。ではなぜ彼らは家族で牡蠣オーナー制度に参加しているのか。彼らが真に買っているものは何だろうか?あなたも、このエピソードを題材に考えてみてほしい。

 私は、97年の著書(第一作目)に、今後日本(および消費先進国)ではこういう消費が主役になっていくと説いたが、30年近く経ち今まさにそうなった。そして、これからもよりそうなっていくだろう。牡蠣を食べられない人が買う牡蠣オーナー制度。そこで「お客さんが真に買っているもの」のために、サービスの送り手は何をすればいいだろう?何がお客さんにとっての価値を上げていくだろう?三代目の会社では、早速皆でこのアイデアを出し合っているとのことである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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