【小阪裕司コラム第330話】「まずは動いてみる」ことが

【小阪裕司コラム第330話】「まずは動いてみる」ことが

今回は、ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)に入会して間もない方からのご報告が題材だ。何事においても「まずは動いてみる」ことで、その成果はもちろん、商売全体に大きな波及効果があるというお話。
同店は、親子で経営する弁当・総菜テイクアウト店。「番頭」を名乗る娘さんは、「とにかく動くしかない!」と一大決心した。当会では入会間もない方だけを集めて行うセミナーがあるが、それに参加し、私からのアドバイスを受けたことがきっかけだ。
そこで早速スタンプカードを兼ねた会員カードを作成、個人情報を記入し会員になってくれたお客さんに、10%オフのクーポン券を配布。併せて、手書きイラストの入った「登録ありがとう!はがき」を送ってみることにした。すると、はがきが届いた方々が次々と「かわいいお手紙をありがとう!」と言いに来店してくれるようになった。受け取った方の七割ほどが、再来店しているという。 さらに、自店により親しみを持ってもらえるよう、詳細なスタッフ紹介を送付することにした。これも実行してみると大変好評、お客さんが気楽に話をしてくれるようになった。

一人暮らしの若い女性客からは「こんなお手紙をもらえてすごくうれしかったです」と差し入れがあり、常連の奥様も「久しぶりにお手紙もらって、あったかい気持ちになったわ。お手紙はいいわね。LINEとかじゃ感じられないあったかさがあるわよね」としみじみしていたという。また、男性のお客さんは、以前は「買いたいものだけをさっと買ってさっさと帰るといった状態」だったが、何かと話しかけてくれ、軽い会話をしながら買い物を楽しんでくれるようになった。
最近では、ある初来店のお客さんから「ここのお店のご飯がとっても美味しくて、スタッフさんもすごく親切だからぜひ行ってみて!って言われたんです」との言葉をもらった。会員の積極的な口コミ、そこで伝えられていることもわかり、「思いがけない、本当にうれしい出来事でした」と彼女は言う。
同店が行ったことはささやかなことだ。しかし、「まずは動いてみる」ことで生まれた成果は、再来店率の増加、リピーターの増大、積極な口コミなど、いずれも店の繁盛には欠かせないものだ。また、お客さんとの会話が弾むことや「本当にうれしい出来事」は次の実践への動力となり、毎日の商売にたのしさを生む。「まずは動いてみる」ことは、意外と大きな、息の長い成果を生んでいくのである。

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。
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