【小阪裕司コラム第349話】「売りたいもの」を売るためには2

【小阪裕司コラム第349話】「売りたいもの」を売るためには2

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第349話】「売りたいもの」を売るためには2

 今回は、前回の続き。ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員の、ある生花店でのお話。同店のような個人店には仕入れのハードルが高い高価な商品を完売できたカギは「発信した情報」で、それは店主の“主観”だった。しかし、その情報を活かすにはもう一つのカギも不可欠だ。

 それは、店主やこの店への信頼や、愛着、共感だ。生花店を営んでいるのだから、店主はプロであり、専門家であることは誰でも分かる。しかしだからといって、店主が「うっとりとほれ込んだ」ものだから買ってほしいと言われても、買おうとする人は少ないだろう。

 しかし例えばあなたがこの店に愛着を持ち、信頼を寄せ、共感を抱いていたらどうだろうか?生花店に限らないが、そういう店の店主から「うっとりとほれ込んだ」ものを見つけた。ぜひあなたにもこの素晴らしいものと一緒に過ごしてほしいと言われたら、心が動くのではないだろうか。

 では、信頼や、愛着、共感はどうすれば持ってもらえるようになるのだろう。それには、同店が日頃から行っている次のようなことがヒントになる。

 例えば同店では、花束、アレンジメントなどギフトの注文の際、それを贈る相手の性別・年齢に加え、必ず「用途」を聞く。「用途」に応じギフトカードをつけて、裏面に花の名前と品種名を記入するためだ。また、ギフトを贈られた人が花の扱いに慣れているとは限らないと考え、手入れ方法を貼っている。そこには、花束なら「ラッピングペーパーと保水(ゼリーやペーパー)をはずし、茎を軽く洗い流して、花器に活けてください」から始まる手入れ法が丁寧に書かれている。

 さらには、地方発送などギフトを箱詰めして送る際、配送業者の扱いが荒く破損することがある。そんなとき、受け取った人がすぐに連絡でき、店も素早く対応できるよう、ギフトには連絡用カードが同封されており、そこに同店の住所・電話番号の他、SNSからも連絡できるようQRコードが記載されている。

 これらは同店が行っていることのほんの一部だが、いずれも日常的なことで、信頼や、愛着、共感のために特別に行っていることではない。しかしお客さんは、こういう同店の普段の営みを通じて思うのだ、信頼に足る店だと。そして愛着を持つようになり、同店の商売への姿勢、花への愛情、お客さんを思う気持ちに共感を抱く。それが「発信した情報」が活かされるカギであり、店主の“主観”がお客さんを動かすもとなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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