【小阪裕司コラム第52話】この準備ができているかいないか
【小阪裕司コラム第52話】この準備ができているかいないか
あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)の、リフォーム会社の方からいただいたご報告。
いつも行っていた集客イベントができなくなったとき、どう切り替えたか。
その結果どれほどの売上があがったか。
彼が勤める会社では、水回りなどのメーカーのショールームイベントとして、リフォームと補助金活用に関するセミナーを行っており、彼は長年講師も務めてきた。
目的は新規受注だ。告知は地元新聞の記事広告。
このやり方でこれまで500回近く開催し、2400名以上の方々に参加してもらってきた。
ところがこの度のコロナ情勢で、状況は一変した。メーカーのショールームが軒並み使えなくなってしまったのだ。
それではと会場を自社に変更してみたが、それまでのようには集まらない。
そこで考えた。
やみくもにメディアを使って広告を打っても効果は薄い。
そもそも時勢的にも、大勢集めることもできない。
ならば、自社にあるリストを使って、細やかなアプローチをしてはどうか。
そこでまずは、普段から強い関係性を育んでいる「応援者」のリストから100名と、過去にセミナーへは参加したがまだ受注には至っていないお客さん100名をランダムに抜き出し、ダイレクトメール(以下、DM)を送ってみた。
ちなみに同社は、ワクワク系の「絆作り」「顧客コミュニティの育成」を重視し取り組んでおり、普段からお客さんとのコミュニケーションを絶やさず、絆を育て続けている。
ここで言う「応援者」とは、そのなかでも、何度も受注をくださり、紹介もしてくださるお客さんのことだ。
そうしたところ、早速この200名のなかから、1件が成約。300万円の受注となった。
この結果を踏まえ、特にまだ受注に至っていないお客さんのリストは数多くあることから、さらに200件抽出しDMを送ってみると、早速3件の商談に。合計900万円の受注見込みとのこと。
彼は言う。「リストが打ち出の小づちのように見えてきました」。
そう、実際、お客さんのリストは打ち出の小づちだ。
しかしそうなるには幾つかの条件がある。例えばそのひとつはコミュニケーションを絶やさないことだが、同社ではそのために、売込みではないDMを送り続けてもいる。
つまり、われわれがよく使う言葉で言えば、このリストは単なる住所録ではなく、人と人のつながりが生きているリストなのである。
その準備を普段からしているかどうか。
それがこういうときにも生きるし、平時には経営の安定を生む。
あえてコロナになぞらえて言う。この準備を進めてきた人は今さらに強化すること。
そして準備できていなかった方は今から全力で行い、今後に備えることだ。
その準備こそがあなたにとって、打ち出の小づちとなるのである。
小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。