【小阪裕司コラム第74話】このレストランが蘇らせたものとは

【小阪裕司コラム第74話】このレストランが蘇らせたものとは

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第74話】このレストランが蘇らせたものとは

あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のイタリアンレストランからのご報告。

お弁当のテイクアウトにおける実践で、「お客様から大絶賛のお声をいただき、
作った私がビックリした」とのことだが、この事例からは、飲食店の今後への
重要な示唆が得られる。

同店一押しのお弁当は「イタリアン伊勢海老弁当」という、価格2千円超えの豪華弁当。写真を見ると、大きな伊勢海老が横たわる、見るからに豪華で美味しそうなものだ。

そこに通常は箸とメニューを添えて販売しているが、今回はワクワク系的に考え、次のものを揃えて添えてみた。

1.箸
2.フォーク・ナイフ
3.イタリアフィレンツェの絵が描いてあるテーブルマット
4.エプロン
5.手書きのメニュー
6.イタリアを思わせる弁当の巻紙

こちらも写真を見ると、テーブルマットのフィレンツェの絵などは、なかなか風情のあるものである。

そうしたところ、お客さんからは絶賛の声が相次ぎ、リピーター増加につながった。
またこれがきっかけで、オードブルなどの注文も増えた。

さらには、コロナで店には行きづらいとこのところずっとテイクアウトしか頼まなかった常連客が、このセットに感動し、やっぱりどうしてもレストランで食べたいと、レストランに帰ってきた。

「こんな現象が起こったことが奇跡と感じてしまいました」と店主は言う。

この店主からの報告は、最近ワクワク系マーケティング実践会で力を入れている実践手法の1つ、「価値のパッケージ化」というものの実践報告なのだが、この例を見ても分かるように、これまでの弁当と中身も美味しさも同じだし、値段も変わらないのだが、お客さんが得られる“食の愉しさ”は大きく異なる。

これはお客さんを喜ばせるための小技でなく、提供する価値の本質に関わる重要な取り組みだ。

そして、この事例から得られるより重要な示唆は、実店舗の本質とは何かということだ。
コロナ禍となって、巷の飲食店は弁当やテイクアウトに力を入れ、通販を始めている。

当会の会員ももちろんそうで、それによって4、5月の緊急事態宣言下でも売上を落とさなかった飲食店の実例は、以前このコラムでもお伝えした。

しかしそれは、ワクワク系では、「顧客リストが収益源」という原理にのっとった策であり、彼らは今実店舗営業に力を入れている。なぜならそれこそが彼らがやりたいことだからだ。

そして今回レストランに戻ってきた常連客のようにお客さんもまたそれこそがやりたいことなのである。

コロナ禍のなか、収益を維持するための手立ては打つ。もちろんだ。しかし見失ってはいけない。それは「手立て」であって、本質ではない。実店舗の本質はどこか。

それこそが、今ここで改めて考え、形にしていかなければならないことなのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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