【小阪裕司コラム第98話】私が梱包しましたカード

【小阪裕司コラム第98話】私が梱包しましたカード

カテゴリ:小阪裕司の「人の心と行動の科学」で商売を学ぶ

【小阪裕司コラム第98話】私が梱包しましたカード

今回は、ある通販会社における梱包スタッフとお客さんとの絆作りのお話。ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のある通販会社では、かねてよりお客さんとの絆作り活動を進めている。
その流れから今回は、梱包スタッフとお客さんとの絆作りに取り組んだ。

その背景には、人によって梱包の精度にむらがあり、クレームにつながることが課題だったこともある。

そこで今回行ったことは、実にワクワク系らしい、「私が梱包しましたカード」の同封だ。 そこには各梱包スタッフが似顔絵で描かれ、それぞれに簡単な挨拶が書かれている。

例えばある男性梱包スタッフのカードには、手書き文字で「本日梱包を担当いたしました〇〇(本人の名前)と申します。至らない点もございますが、これからも〇〇(店名)共々よろしくお願い致します」とあり、添えられている似顔絵には、本とお酒の絵があしらわれていて、この方は読書とお酒が好きなのかなと、うかがえるものになっている。

これをやり始めて最初に起こってきた変化は、クレームがクレームでなくなってきたことだと店主は言う。

以前は梱包について
「ちゃんと検品していますか?」
「頼んだものと違うものが届きました」
など、文字通りのクレームだったのが、クレームからありがとうに変化することが多くなってきた。報告書には一例として、実際にお客さんからいただいた手書きの手紙が添えられていたが、そこには「ご注意」とあり、確かに希望とは異なるものが届いた旨が綴られていた。

しかしその文章の前には、梱包担当者へ向けた「丁寧な梱包でありがとうございました。
そして、イラスト付きのメッセージ心が和みました」の言葉が。
ご注意に続いては、とはいえ届いた品は品でどんなところが良いかが語られていた。

このお客さんとのやり取りも、初回はメールでの、「届いた商品が商品ページの商品と(配色が)違う。交換してほしい」との一文からだった。

それに対してこの梱包担当者がお詫びと、説明の電話をしたことに対する返信がこのお手紙だった。
ここで言いたいことは2つ。
ひとつは、直接的な接客のない通販で、しかも梱包担当者との間ですら絆はできること。
もうひとつは、絆ができて来ることで、互いが互いにとってどんな関係になって来るのかが、クレームがクレームでなくなるところに表れていることだ。

世のサービスは効率重視で機械的になり、このような機会も減っている。
だからこそこういう活動が、今日のお客さんにとってはとりわけ心に響くものとなるのである。

小阪裕司

小阪裕司 オラクルひと・しくみ研究所代表 博士(情報学)

山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業、広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。 新規事業企画・実現可能性検証など数々の大手企業プロジェクトを手掛ける。 また、「人の感性と行動」を軸にしたビジネス理論と実践手法を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。 現在、全都道府県と海外から約1500社が参加。 22年を超える活動で、価格競争をしない・立地や業種・規模を問わない1万数千件の成果実例を生み出している。

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